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第130話
「俺はお互い様かな。好きって言われたら好きって言うし、拓馬さんは普段無口で何考えてるかわからないけど優しいから」
ふうん、と頷くとシュウはどうなの? とクインに聞かれる。
「俺は、向こうが好きって言ってくれる。自分じゃ恥ずかしくて十の好きに対して一回くらいしか応えられない」
へぇ、やっぱりとアレンが言った。唯斗さんは王子様だから。その一言で説明がつくらしい。たしかに、何でもかんでも世話を焼いてくれる王子様というよりかは、秀治にとっては母親みたいだと思ってしまう。普通の家庭で育ってこなかった分、唯斗の持っている母性のようなものに惹かれているのだと。
「でも、ちゃんと伝えないと気持ちは伝わらないから。シュウも頑張って言ってごらんよ」
もっともらしいことをクインから言われて、確かになと一人納得する。アレンにぽんと肩を叩かれた。何かを思いついたように目を輝かせている。
「じゃあさ、トリプルデートしてみる?」
トリプルデート? とクインと秀治が繰り返す。
「三組でデートしてみてさ、それぞれのカップルの様子を見るってのどう? いい刺激になると思うけど」
賛成とクインがアレンに抱きつく。秀治はなるほどなと顎に手をやった。たしかに、アリかもしれない。普段のカップルがどんなことをするのかも見れるなら見ておきたい。
「義則さんは人見知りだからちょっと不安だけど、聞いてみるね」
すぐさまメッセージアプリで連絡を取り始めたクインを横目にアレンも電話をかけ始める。秀治もそれにならって唯斗にメールを送る。仕事終わりにでも返事が来ていたらいいなと淡い期待をしてコーヒーを啜った。
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