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第139話
「ふぅ、美味しかったなぁ」
店の外で大きく伸びをしたクインを道ゆく人がちらちらと見てくる。江ノ島に着いたときから人の視線を感じていたが、やはり見た目が華やかなので目を引くらしい。それに、と秀治はお互いの相手を見つめる。義則も拓馬も唯斗も皆スタイルがいいしお洒落だ。顔も整っていてモデルと間違われても疑わないだろう。義則は紺色のズボンに幾何学模様のニットを着ている。その上に羽織ったジャケットは白い革で高級そうに見える。独特なファッションセンスだが、下北沢にいそうでこういう格好も似合うなら着てみたかったと自分の体と見比べて思った。
あまりにじっと見つめていたからだろうか。義則が、ん? と首を傾げて秀治を見つめた。すみませんと謝ってそっぽを向くとくすくすと笑われた。
それからは江ノ島アーケード街と呼ばれる地元の商店街を見てまわったり、釣り堀で魚釣り体験をしたりと充実した時間を過ごした。陽が傾いてきたのでそろそろ帰ろうと思っているとクインがだだをこねはじめた。
「今冬だけどそんなに入りたいの?」
「僕にとって海は特別なの!」
まぁまぁと唯斗がクインと義則二人の仲裁に入り話を聞く。クインは真冬でもどうしても江ノ島の海が見たいのだという。しかし、あまりに寒くなってきたので義則が風邪をひかないうちにホテルに戻ろうと言っているのだ。
「義則さん! お願い。一生のお願い」
ここまで来たんだからとクインは義則に手を合わせる。仕方ないなぁと必死の嘆願についに義則が折れた。
「じゃあすぐ見てすぐ帰ろう」
「わかった」
るんるん気分でスキップしながら前を歩くクインを残りの五人で見つめていた。
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