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第141話

 大部屋と聞いていたが、まさかここまでとは。秀治は目の前に広がる光景に目を瞬かせながら見入る。アメリカの恋愛リアリティーショーで見るような豪華なダブルベッドが三つくっついて置いてある。ここで皆で川の字になって眠るのを考えると笑いが止まらない。部屋の前に江ノ島の海を端から端まで見られる露天風呂付きだ。一個一個の建物として独立しているらしく、五百メートル以内にはこの部屋しかないらしい。離れのような一角だと思いながらビックサイズのソファに沈んだ。一日はしゃぎ回ったおかげで体が疲れている。今日は早く眠って明日の夜の仕事に備えたい。  しかし、宴はこれからと言わんばかりにクインは騒ぎ始めている。これからメインホテルの大広間でバイキング形式の夕食の時間になるということもあって、一同はメインホテルへ向かう。    ご馳走は豪華だった。海鮮から山の幸まで隅から隅まで揃えてある。あわびに鯖に鮭に鰯。タコなんかもあった。近くの山でとれたジビエや、養殖されている牡蠣など目白押しだ。全部食べたい気持ちを抑え、食べられる分だけ皿によそっていく。ホテルを抑えたのは拓馬だと聞いている。これはお礼を言わなければと思った。   「カンパイ」  義則の一言で皆でキンキンに冷えたビールを飲む。少し苦く感じるが、疲れた体には沁み通るようで悪くないなと思っていると、唯斗がちらりとこちらを見てきた。 「あんまり飲みすぎないように」  そう釘を刺される。最近過保護になってきた唯斗にはいはいと返事をしてジョッキに口をつける。今日は楽しい一日で、美味しい酒で一日を締めくくりたかった。

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