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第163話 ずれていく足音

 唯斗に連れられ秀治はショッピングモールに来ていた。久しぶりの再会とあって唯斗はご機嫌だった。唯斗に似合うからと言われて買ってもらったスーツの紙袋を見つめながら、カフェテラスでコーヒーを飲む。雲の隙間から差し込む光は神々しく見えた。その光の中に今俺はいるのだと思うと胸が詰まる。何もかも与えてもらってばかりだと思いながら、向かいに座る唯斗の顔を眺める。今日は前髪をセンター分けにしているから、薄茶色の形のいい瞳とまっすぐ目が合う。頬を持ち上げて軽く微笑まれ、秀治もそれにつられて笑った。 「シュウくん。このあと家に寄るよね?」  当たり前のように唯斗が聞いてくる。秀治は小さく頷いた。ほっとしたように唯斗が肩を下ろす。長い睫毛が揺れていた。 「よかった。あれからほとんど会えてないから心変わりしてたらって思うと不安でいっぱいだった」  自信満々に見えるこの人も弱い一面があるんだなと思ってしげしげと眺めていると、肘を撫でられた。ぴくりと肩が跳ねる。 「飲み終わったら行こうか」  ゆっくりでいいよと付け加え、唯斗はスマホをいじり始める。その横顔は仕事モードに入っていて真面目な顔つきをしている。そんな表情も秀治は好きだった。 「今日はピザでも頼もうか」  リビングのソファの上で唯斗の膝の間に体を沈めている秀治に、耳元でささやいてきた。息が当たって少しこそばゆさを覚えながらも小さく返事をする。スマホのメニュー画面を眺めながら、オススメはこれだよと指で示してくれた。 「ハラミスペシャル?」 「そう。ハラミと野菜がたくさん乗ってて美味しいよ」

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