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第180話
「あいつは俺と馬が合わない。おまえに何かしてくるかもしれないから、一人になるな。クインかアレンと一緒に行動しろ」
「わ、わかった」
やけに真剣な言葉に秀治の背筋が伸びる。すると、今度はうって変わったように穏やかな声で囁かれる。
「次はどこに行きたい」
寿司屋に連れて行ってくれてからというもの、降谷は幾度か秀治を食事に連れて行ってくれた。割烹屋やお洒落なカフェ、中華の食べ放題。どれもこれも初めての体験で単純に楽しかった。しかしいつもこの行動の裏には何があるのかと考えてしまい、胸がざわめいていた。なんとなく、自分が降谷といて居心地がいいことに気づき始めていてそれがまた秀治の心を掻き乱す。
「今度は降谷の行きたい場所にしろよ」
いつも可愛げのない返事をしてしまう自分がひどく憎らしい。
「そうだな……考えておく」
「うん」
しばしの沈黙。しかしそれも苦痛ではなかった。降谷と同じ時間を共有できている気がして落ち着くのだ。
「早く寝ろよ」
「うん、おやすみ」
そう言い終えると電話が切れた。秀治は自分から電話を切るのが苦手でいつも相手に合わせてしまう。ほんとうはまだ話したいことが山ほどあったが、仕事で多忙な降谷の自由な時間を奪いたくなかった。俺の心配するより、自分の心配しろよ。いつもそう思いながら電話の余韻に浸る。とにかく、降谷の兄には気をつけようと胸に留めてベッドに入った。
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