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第一章 第2話

 高校に入って5月も半ば。  クラスのイツメンもグループごとに付き合うようになって久しい春の季節。 「αクラスに通ってるαが突然変異でΩに変転してクラスで犯されるAVな、あれΩの方に感情移入しちゃってめっちゃ抜けるんだよ」 「なにそれ、琉人(りゅうと)アンタ可哀そうなの無理って言ってなかったっけ」 「いやそうなんだけど、クラスでマワされんのとか無理なんだけどめちゃくちゃ興奮するんだよ」 「挿れられる想像してってこと?アーシら女は抜くとかオナニーとかわかんないからアンタの言うこともわかんないけど。じゃあ彼氏作って挿れてもらえば」 「そうか……女はオナニーしねえのか。いや、俺もケツはいじったことねえから挿れられる想像とかじゃねえんだけど。とにかく捗る」 「わかるわ。その状況に興奮するってか……そのAVめっちゃ有名なやつじゃん」  俺のAV談義に乗っかって来たのは木野崎(きのさき) 光輝(こうき)。  俺と同じΩの男だ。  相浦(あいうら) 琉人(りゅうと)、俺の名前。俺は小学校からの学校生活で出席番号が一番以外なったことがないが、高校入学と同時に出席番号順で隣の席になった木野崎はそれ以来仲良くしてくれている。  話し相手になってくれる女は涼華(りょうか)。Ωだけどあからさまなヤンキーで、物心ついた中学辺りから今までずっとαの彼氏をとっかえひっかえしているらしい。俺のシモの話題にも引かずに付いてきてくれる貴重な女だ。 「俺、雰囲気に酔うタイプだから。複数人とかぜってえ痛いだけだろってわかってても興奮するな」 「なんだお前……雰囲気に酔うとか童貞くせーっ」  雰囲気に酔うという木野崎を笑うのは赤城(あかぎ)。男Ωだ。  俺の後ろの席の奴。  チャラくてバース性問わず女とよくいるモテ男。 「つーかアンタら、アーシはいいけどうららの前でんな話してんな。うららシモとか強くねーし」 「わ、私!?気にしなくていいよ。普段しない話だから新鮮で面白いし」  涼華の隣で顔を赤くするのはうらら。この学校の女子全部合わせても一番を争う清楚美人として有名なΩ女子だ。うらら狙いの奴らがバース性問わず見物に来るほどのモテ女。清楚なのにエロにも寛容なんだからモテるに決まっている。  木野崎、涼華、赤城、うらら、俺。1年Ωクラスで仲のいいグループ。  木野崎と赤城は男同士なので特に仲が良いが、涼華とうららも含めたこの5人で朝から放課後までよくつるんでいる。 「ったくおめーらは女子にも配慮して場考えてものを喋りやがれ。朝からなんつー話してやがんだ。出欠取るぞー」  パコンとボードで頭をたたかれた。  現れたのは担任の春崎。学校教師にはβが多いが、それにならうように春崎もβだ。  出欠を取り終わった春崎はコンコンとボードにペンを叩きながらHRを続ける。 「今日は3限と4限2時間にわたって視聴覚室で特別授業だ。αとΩは俺らβからしちゃ貞操観念の低い生き物だから、操立てるための倫理の授業。これは国がαクラスとΩクラスにぜってー受講するように規定してるモンだから体調不良以外では休むな。コンドームも配られるから失くすな。自分で買えねー女子も講義で配られたコンドームはいざという時の為に肌身離さず持っとけ。αクラスと合同授業になるが問題は起こすなよ。念のために全員抑制剤を飲んでから授業に臨むように。以上。委員長号令」 「規律、気を付け、礼」  予鈴のチャイムが教室のスピーカーから響き渡る。  αとの合同授業に向けて気合入れ始めたクラスの面々をよそに俺は大きなあくびをした。

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