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第一章 第3話

 特別合同授業はΩにとってもαにとっても番探しに有益な交流を得られる一番気合の入る授業だ。  だがΩにモテる俺にとってはαは邪魔な奴ら。  普段俺に靡いてるΩ達がαの為にせっせとおめかしし始めるのだ。居心地悪いったらありゃしねぇ。  そして双方がお互いに声をかけるチャンスを伺ってはそわそわしたりなんかしちゃうわけで。 「はーっ。今更貞操観念なんてαにもΩにも備わってないもん植え付けようとする特別授業とかやってらんねーよな」 「なんだよ、嫌なのか琉人。αの女と知り合うチャンスじゃん」 「赤城、オメーは女のことばっかだな。その調子で男とも寝るんか」 「いや俺は将来美人のバリキャリ女α見つけて養ってもらうって決めてるから。男はいいや」 「オメーが女α狙ってるのと同じで男αに狙われてても知らねーぞ」 「こ、怖っ……俺イケメンだから狙われてもおかしくねーわ。お前も普段からΩにめちゃくちゃモテてっからなぁ~、αにもモテてもおかしくねぇよな」 「だりィ~……木野崎は……まぁ大丈夫か」 「アレ?どうゆーイミ?俺だって女子にはフツーにモテてますけど?」 「ハハハハッ」 視聴覚室にて、休み時間を過ごす俺達。 αクラスが遅れてやってきた。 「あ、相浦じゃん」 「ゲッ」 「あっ、葛飾(かつしか)君だ」 「隣ドゾー」  真っ先に俺に声をかけてきたのは男αの葛飾(かつしか)。Ωクラスにちょっかい掛けてくるグループの奴だ。誰かに似ていてもやもやするのだが誰に似ているのか思い出せないような顔の奴だが、高校入学当初からΩクラスに遊びに来ては俺にちょっかいを出してくる。 「相変わらずΩは美形ばっかで眼福だな。αはそうでもねーのにΩは美人にイケメンばっかって世の中理不尽だよな~」 「だから何だよ。……座んな」  視聴覚室の机は3人ごとの長机、長椅子だ。 端から赤城、木野崎、俺の順に座っていて隣の机に葛飾が着席する。 顔見知りだからと俺達の隣の席をさっさと明け渡す赤城と木野崎にもイラつくが、流れるように俺の隣に座る葛飾にイラっとする。  葛飾とつるんでいる男αの京本(きょうもと)も葛飾の隣に着席した。 「まぁΩが美丈夫ばっかなのはα落とす為だもんな。滾るわぁ」 「き、きも……っ。Ωは顔が良い生き物なだけでαの為なわけねぇし。自意識過剰野郎」  Ωは両親の片方でもΩだった場合に生まれる可能性がある。  美人な母親と美丈夫な父親から生まれた俺だが、αやβとの間にできた子だとしても子供の性別がΩだと美形の優性遺伝子を拾いやすくなっているのだそうだ。  Ωは総じて美形が多い生き物なのだ。 その中でも美人と美形の遺伝子を受け継いだ俺のような人間は超絶美形なわけだが。  決してαを釣るためではない。ただそのようにできているだけだ。  ドン引く俺に葛飾はからからと笑った。  春崎が視聴覚室の前側の入り口から入ってくる。 「お前らー。αもΩも抑制剤は飲んだかー」  教室の面々がハーイと各々返事する。  教室の巨大スクリーンにDVDを映すために春崎が準備し始める。  パチンパチンと電気を消す音が教室に響いた。  小中高とΩもαも見飽きるぐらい見てきた使いまわしの教材ビデオを見て授業は終わった。  教室が明るくなり小さいブックレットのような教材とコンドームが配られた。 「授業はビデオを見て終わりにするが、配った教材もちゃんと読めよ。番や恋人以外との不純異性交遊はするな。特にΩは子供ができやすいから股かけてたら万が一子供ができたときに大変なことになるからな。ヤルことヤリたきゃ番か恋人同士で真面目にやれ。解散」  DVDの時間に合わせて早めの昼休みに突入する。  普段俺に纏わりついているクラスメイトが葛飾と京本に話しかけに来た。 「あの……いつも相浦君たちと話しに教室来てるの見てて……良かったら連絡先交換しない?」 「いーよ。てか君たちいっつも相浦の側にいる子たちじゃん。もっと早く言ってくれたら良かったのに」 「あっ、ありがとう……」  赤面するクラスメイト達に俺はムッとする。  いつもは俺のことイケメンだなんだって褒めては俺に寄ってくるのに、αが来るとこれである。 「てか、葛飾君と相浦君って同じタイプのイケメンっていうか……アタシらのタイプなんだよね」 「ねっ」  ムッとした俺に感付いたのか、フォローになってないフォローを入れるΩたち。 「京本君も交換しよ?」 「おっけ。QRで良い?」 「うん!」 「僕もお願い」 「良いよ」 「キャーッ!!」  わちゃわちゃと歓声が上がる。  それを見た赤城が意気揚々と輪の中に参入する。 「なんだよ、言ってくれたら俺がお前ら繋げたのに。葛飾君たちの連絡先持ってっし」 「えッ……お前コイツらと繋がってんの!?」  それを聞いた俺は驚愕である。 「マジか赤城」  木野崎も驚いた様子で赤城を見る。  赤城と葛飾・京本は当然と答えた。 「てかいつもあんだけ遊びに行ってるのに連絡先も教えてくれない相浦と木野崎のがおかしいからね。ガード硬すぎ」  葛飾がケラケラと笑う。 「何で俺がお前らと連絡取り合わなきゃいけねーんだよ。話すことなんかないだろ」 「いいや?ΩのくせにΩちゃんたち独り占めしてる相浦に俺らは用があるし」 「は?」 「ああ、Ωのくせに……はマズったか。でもΩ同士なんてαの味知らねーから一緒に居られるんだって。実際、Ω同士の恋愛なんて今だけでαが介入したら番とか結婚とか別にしてヤるだけでもαの方がよくしてやれるって」  笑う葛飾と京本を見て、Ω連中の期待を孕んだゴクッと唾を飲む音が聞こえる 「……俺はヤるにしてもΩとかαとかカンケーねぇと思うけど」  ぽつりと木野崎が呟いた。 「木野崎、お前はマジで俺の大親友」 「相浦……別にオメーの味方したわけじゃねーから」  嫌そうにする木野崎に俺はすりすりとすり寄った。 「光輝って意外にセッソーねーよな!」  笑う赤城に木野崎は「ちげーよ」と軽く赤城の頭をはたいた。 「オイ、昼飯食いにいかねーの。アーシら先行っとく?」 「あぁ、今行く」  ヌッと現れた涼華とうららに合流する。 「じゃーね、相浦」 「……」  ひらひらと手を振る葛飾をシカトして俺たちは視聴覚室を後にした。

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