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第一章 第5話

「光輝くんさぁ」 「どうした相浦」  次の日俺は、木野崎にお伺いを立てることにした。  女とデートだと言って先に帰った赤城と、放課後ショッピングだと言って二人連れだって出て行った涼華とうららが居なくなった教室で木野崎を捕まえる。 「ヤるのにαもΩもないっつってたじゃん」 「ああ……それがどうかしたか?」 「なんでそう思ったの?」 「相浦……お前、ふたなりってどう思う?」 「ふたなり?」  ふたなりとは、いわゆる両性具有のことだ。  おっぱいもついててチンコも穴もケツもあるαの女がその筆頭で、ふたなりといえば女αが出てるAVなんかがよく見られる。竿役が複数だったり、大人のおもちゃもバンバン登場する少々ハードめなやつだ。 「エロいと思うけど……ふたなりがなんか関係すんの?」 「うん。ふたなりといえば女αじゃん。でもさ、俺ら男Ωも……言ったらふたなりだろ」 「そうね。穴無いけどケツがあるし。子宮あるし。おっぱい無いけど乳首はあるし」 「だからさ、俺の中でエロいモンつったら女αと男Ωが一番なわけ。ヤるなら女αか男Ω。この二択は外せないね」 「お前……そんなハードな性癖をよくあの一言に込めて発射したな」 「まあな」  ふふんと何故か少し得意げな木野崎。 そうか。木野崎は女αと男Ωが好きなのか。  Ωが好きな俺と近からず遠からずと言ったところだろうか。 「じゃあお前、女αと将来番になるわけ?」  ちょっと核心を突くようなことを聞いてみる。  俺が知りたかったのはこの部分である。 「いやぁ……どうだろ。番うなら女αだろうけど、恋人だったら男Ωも有り……てか絶対に将来番作るとは限らねぇわけだし」 「じゃあさ、抱かれるならどう?男αも入ってくんの?」  これも聞きたかったことの一つだ。  俺たちΩはやはり、男でもセックスと言えば抱くこともできるが抱かれることも選択肢の一つとして標準装備されている。  そういう風にできているからだ。  Ωを捕まえて抱くのが当たり前の男αなんて、俺達Ωの発情対象になるに決まっている。  女αと男Ωが恋愛対象の木野崎でも、抱かれるとなれば男αを想像するかもしれない。 「それがだな、相浦」 「うん」 「男Ωって、ちんぽついてるから孕ますこともできるじゃん。で、ケツで抱かれることもできるじゃん。抱くしかできない男αよりも、男Ωとセックスして抱いて抱かれる永久機関完成……の方が俺的には最高なんだよな」 「抱いて抱かれる……!?」 「そう。二人で抱くのも抱かれるのも両方やんの」 「!?!?」  そうか、そういう考え方もあるのか。  俺は抱くか抱かれるかでどこか仕切りを立てて考えていたところがある。  極端な話、男αと番になったら一生抱かれる側になって過ごすとか、そういうことである。  抱くのも抱かれるのも二人で両方やっちゃうなんて、俺の中では新境地。  でも、確かにそうか。男Ωならそれでも普通だ。女αでもそうだけど。 「木野崎、俺の顔って、どう?」 「どうって……美形だよな。……そんじょそこらのΩとはやっぱ違うわ」 「だろ。そうだよな」 「お、おう。すげえ自信だな」  当然である。  幼いころから聞かされてきた美人の母親と美丈夫な父親以下略で俺はかなりの美形に生まれ育ったのだから。 「お前、俺で抜ける?」 「抜っ……は?なんて?」 「俺、お前が好きな男Ωで、マジで顔が良い上物なんだけど。木野崎は俺で抜ける?」 「抱く方?抱かれる方?」 「両方ってお前が言ったんだろ」 「……。……お前みたいなのだったら、正直いけるな。両方」  ぐっと押し堪えるように木野崎が答えた。 「光輝くん。君処女かい?」 「そーだけど」 「もしかして童貞?」 「っ……そうだけど」 「じゃあ、おれが童貞も処女も貰ったげる……みたいなシチュで俺のことオカズにしても良いよ」 「……は!?」 「ちなみに俺も処女。オナニーに後ろ使ってっから完全な処女ではないかもしれんが」 「マジで言ってんの、お前」 「うん。俺のこと使って」 「……エロッ!お前!!淫獣かなんかなの!?」 「へへへへ」  カッと顔を赤くする木野崎に、ニコニコと微笑んでやる。今まで付き合ってきた奴らも落としてきた悩殺スマイルである。  木野崎の、今までただの友達として俺を見ていた視線が、その目が、一気に食うような、ねっとりと熱を孕んだものに変わる。  椅子に座っている俺の頭からつま先まで舐めるような視線に捕まるのがわかる。  ああ、やっぱこいつ、男Ωが好きって本当なんだ。  一瞬で俺のことそんな目で見れるような、そんな奴なんだ。  そしてそのスイッチを押したのは、俺だ。  きっと今日帰ればこいつは俺をネタにヤるだろう。  挿れる方も、挿れられる方も俺でいっぱいに満たされるだろう。  特にふたなりや永久機関が性癖とかいう木野崎は猛者である。  そして童貞の想像力はきっとすさまじい。  葛飾や京本の妄言なんか、もう俺たちの間からは吹き飛んでいた。

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