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第一章 第7話
昼休み、いつもの5人でダベっている時だった。
木野崎が紙袋を俺に渡してきた。
「何これ?」
中身は見えないように、黒いビニール袋に覆われている、
「開けんなよ」
木野崎が紙袋の入り口を、ぐっと掴む。
「えっ、うん……だから何?コレ」
「アナルプラグとエネマグラ、あとアネロス」
「え?」
「は?」
「おっ?」
「え……っ!」
俺、涼華、赤城、うららは木野崎から出た言葉に三者三様の反応をした。
「何?なんで光輝はそんなもん琉人にあげんの?」
赤城がうきうきと割り込んでくる。
「お前、αクラスの西条さん落とすっつってたじゃん。だからこういうのも、必要だろ」
「は!?琉人、西条好きなの?」
涼華が目を丸くして聞いてくる。
確かに落とすとは言ったが、好きなわけではない。
「まぁ……いや……うん……」
歯切れの悪い返事をする俺に、赤城が乗っかってくる。
「おもちゃでケツまで使うってことは、身体から落とすってこと!?挿れるのも挿れられるのも西条さんに仕掛けちゃうってこと!?」
「そうだけど……」
「ほ、本気なんだね……」
うららがちょっと恥ずかしそうに呟く。
清純派のうららにしたら、身体から始まる関係なんて想像にもできないだろう。
「……俺、色仕掛けで落とすなんて言った覚えないんだけど」
「でも要るだろ。西条さんも女だけどαだし、挿れられるだけじゃなくて挿れたいだろうし」
「それは、そうだけど……」
こいつは俺が、お前のこと好きだって忘れたんだろうか。
わざわざ俺が他の奴に抱かれるサポートまでしてくるとは思わなかった。
「コンドームとローションは自前のあるだろ。でもおもちゃは持ってねーだろうから、やる。俺のだけどちゃんと洗浄してあっから」
俺の。
てことはやっぱこいつも、俺に抱かれる想像しながらヤッてたってことだ。
そんなことを考えると下腹部がぐっと重くなる。
「てか西条って……メッチャ真面目そーだしアンタとタイプ違うじゃん。付き合えんの?」
「……それな」
「いや、自分のことっしょ。なに他人事みたいに言ってんだし」
涼華の心配は最もである。
自慢でもなんでもないが、αの中でも俺みたいなイケメンΩと付き合いたいという男子や女子はフツーに居るのだ。
なのに俺は、比較的貞操観念がしっかりしていてしかも真面目そうなαクラスの委員長、西条さんを落とすと豪語した。
相手は俺のことなんか眼中にも無いだろう。
ましてやセックスなんか番か恋人相手じゃないと絶対にしてくれなさそうな西条さん。
でもあの時パッと思い浮かんだのが、西条さんだったのだ。
「西条さんだったらお前のことちゃんと抱いてくれそうだし。お前に抱かれるときもテキトーに抱かれるんじゃなくて、ハッキリ求めてきそうだから良いだろ」
木野崎が俺に言う。
いつものテキトーに寝る相手とは違って、俺にちゃんと抱かれて来い、抱いて来い、と言っているのだろうか。
テキトーじゃなくて、ちゃんとセックスして、それでも木野崎の方が良いって俺が思うまで、こいつは俺のことを待ってる。
「まー、たしかに西条さんみたいなタイプはそうかもね。ちゃんとしてそう」
「私も、良いと思うよ」
赤城とうららに返答する。
「付き合えるかどうかわかんねーけどな」
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