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第三章 第31話
「……お前ら、それ流行りか?」
担任の春崎が教室を見渡して呟く。
というのも、俺が木野崎にカラーを渡して、赤城がカラーを付けだした後日、1年Ωクラスではカラーが流行りだしたのだ。
目立つ俺たちのグループが全員カラーを付けているからだろう。
人は、多くの人間がそのようにしているとそれに習いたくなるような習性を持っている。
今ではクラスの大半が、カラーを付けるまでになっていた。
βの春崎にしてみたら、見慣れない光景なのだろう。
うららがモデルをやったカラーの広告も、αとΩの間では大流行しているが、人口の大多数を占めるβの大半が自身とは関係のないカラーには興味を示さず、あまり広まっていない。
「カラー付けるってこたぁ、まぁ前の貞操観念の低い教室とは違って、ちゃんとしてて良い。その調子で誰彼構わず寝るのは辞めろ。
今日は5限と6限は講堂で特別授業だ。番契約についてαとΩのあり方を大学から教授が講義しに来てくださる。お前らもそろそろ番を意識し始める年齢だろうから、番になったαとΩがどうなるのか、番契約がお前らにとって悪い方に傾かせないために教授の話をしっかり聞け。αクラスとの合同授業になるが問題は起こすな。全員抑制剤は服用しろ。
委員長と日直は講義の準備の手伝いで昼休みから講堂に来い。12時45分集合だ。以上。委員長号令」
一日を過ごす中で、昼休みはすぐにやってきた。
12時30分から昼休みに入るので、日直と委員長は15分で昼飯を食べて講堂に集まらなければならない。
「今日日直うららっしょ」
涼華がうららに声をかける。
「うん。お昼はパンでいいや」
「アーシは食堂寄ってくるわ」
「俺も、食堂」
赤城が涼華に賛同する。
「じゃ、俺らはうらら手伝うか」
そう言った俺の言葉を聞いて、木野崎がうららに聞く。
「俺ら一緒だと、邪魔か?」
「ううん。助かると思う。αクラスからも、委員長と日直しか来ないだろうから」
俺と木野崎とうららは、お昼は手持ちの軽食で済ませて、講堂へと足を運ぶ。
「はーっ。今更番についての話なんか聞き飽きてるよな」
「番にされるΩ側に不利な話延々聞かされるだけのこともあるしな」
ため息をつく俺と同意する木野崎。
「うららは番候補と付き合ったことあんの?」
湧いて出た疑問をぶつけてみる。
「ううん。Ωの子たちとは付き合ったことあるけど……実はそういうの、シたことないの。αとも、付き合ったこと、ないし」
「っぽいな。そんな感じ、するわ」
「つってもαと付き合ったことねーの、俺らぐらいの歳じゃまだフツーだよな」
「ずーっとバースでクラス分けされてるもんなー」
「涼華みたいな例外もいるけどな」
「ふふふ」
そんな話をしながら講堂に着いた。
講堂の背後に取り付けられている重い扉を開く。
中はもう電気が点いていて、正面真ん中のステージから円形にできている2階席の向こうにスクリーンが下がっていた。
「何お前ら。委員長か?」
横から突然声がする。
見ると、葛飾と京本がマイクと機材を腕に抱えて立っていた。
「いや、日直。と、俺らはその手伝い。お前らこそなんだよ」
葛飾が答える。
「京本が今日、日直なんだよ。俺が手伝うから委員長は帰らせた。つーか、お前西条と別れたろ。西条来なくてよかったな」
そうだった。
αクラスの委員長は西条さんだった。
気付かずに手伝いに来てエンカウントしていたら大変なことになるところだった。
「……何で知ってんだよ」
「見てりゃわかるわ」
苦々し気に聞く俺に即答する京本。
「つーか、お前んとこの委員長は?機材職員室との往復だから直でここ来ても意味ねーぞ」
「は?早く言えよ。……職員室行こうぜ」
踵を返す俺達を尻目に、葛飾と京本はステージに向かって階段を下りていく。
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