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第四章 第41話
結果的に言うと、俺はうららのコネを利用することにした。
まず名刺の番号に電話をかけ、スカウトされたことと、うららの友達であることを話す。そしたら後日、うららと一緒に担当の男と待ち合わせをすることになった。
「うらら、わりいな」
「全然いいよ。私なんかより、相浦君の方が芸能人みたいだもん。向いてるよ」
謝る俺に、謙遜したうららがおれを持ち上げてくれる。
チェーン店のレストランで、俺とうららは飲み物を頼んで男を待っていた。
「あっ、ほんとに一緒に来たんだ。遅れてごめんね」
遅れて男が俺の正面、うららの隣に座った。
「……うららちゃんの友達だっていうから期待して来たけど、君、凄いね」
「はあ、まあ」
俺は適当な返事をする。
「お名前は、相浦琉人君、16歳だね。ちょっと席、立ってみて」
俺は言う通りに立ち上がる。
「身長はまずまずだけど、顔が小さいから実際よりも背が高く見えるね。手足が長い。君はΩ?」
男が俺のカラーに目線をやる。
俺はΩにしては、小柄でもやせ型でもなんでもない方だ。女顔だとか、中性的で小綺麗なΩとも違って、完全に父親似だ。今も付けているカラーが無いと一発でΩだとはわからないだろう。
「そうです」
「ビジュアルは200点満点だよ。そういえば、どうして僕に連絡してきてくれたのかな?」
「……うららと同じ事務所に入りたいと思って、名刺探したら、あったから」
「そっか。憧れの芸能人とか、いる?」
「うららかな」
「なるほど。俳優、アイドル、モデル、どれがやりたいとかある?」
「なんでも良いです」
「特技は?」
「ないです。強いて言うならΩの子達と寝るぐらい」
「寝っ……そういえば、うららちゃんに憧れてるって言ってたけど、君はうららちゃんのことが好きなの?」
「友達としては、好きです」
「友達として、か。うちは恋愛禁止じゃないとはいえ、スキャンダルには気を付けたいんだよね。今まで通りにΩの子達とは寝られなくなるけど、それは大丈夫?」
「もうしてないから大丈夫です」
木野崎のことは、伏せておく。
「友達としてってことは、うららちゃん狙いでうちに入りたいわけじゃないんだよね。どうしてうららちゃんと同じ事務所が良いって思ったの?」
「……うららが、カラーを外せなくなったから。同じ会社なら、ちょっとは傍に居てやれるかもしれないと思って」
「カラーを……そうなの?」
男はそこまでは把握していなかったようで、驚いたようにうららに聞く。
「は、はい……。前に、αにうなじを噛まれそうになったことがあって……。その時はカラーをしてたから、助かったんですけど。怖くて、カラー外せなくなっちゃって」
うららがおずおずと、事の顛末を話す。
「そうだったのか……。そんな事情まで知ってるってことは、君たちって実は、結構仲が良いの?単なるクラスメイト程度かと思ってたけど」
「同じグループの、友達です」
うららが答えた。
「本当?それはそれは……。……うららちゃんも、話しにくいことを話してくれてありがとうね。琉人君、連絡先を交換しよう」
「はい」
俺はスマホを取り出す。
「うちの会社の住所、送っておくから。また担当者から連絡するよ。今日はありがとう。会計は僕が持っておくから、気にしないで」
男が伝票を持って席を立つ。
俺とうららもそれに続いて店を後にした。
会社からの連絡は、存外すぐに来た。
俺のマネージャーなるものが決まったのだという。
顔合わせのために会社に来いとのことだった。
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