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第四章 第46話
冬休みになった。
俺たちΩは勿論、補習授業。
生徒会も無事選挙を終えて、いつも通りの日常が戻ってきた。
「てかうちの学校さぁ~、文化祭も体育祭も3年に一回しかないとか、ヤバくね」
赤城がぐでんと机に突っ伏したまま、喋る。
「確かに女の子フィッシングすんのは楽しいよ。長続きすればテンションも上がるし……。でも決定的に、イベントがねぇよな!!」
そう。うちの学校は、3年に一回しかイベントがない。うちは進学校でもなんでもないが、勉強やスポーツの大会に力を入れている学校なんかでは、そういう学校は珍しくない。3年間きっちり通えば3年の中で一度は体験することができるが、学生同士のそう言った取り組みや交流は重視されていない。
「体育祭は一昨年、文化祭は去年やったらしいから少なくとも来年までは何もないな」
木野崎がまた情報屋のようにぺらぺらと応じる。
「それ、どこ情報?例のβの友達?」
「そう」
俺の質問に木野崎は短く答えた。
「てかうららと琉人は仕事で忙しくなったらどっちも参加できないっしょ」
涼華が水を差すようなことを言う。
「え~!!仕事なんか休んで、俺達と青春しようぜ!一回きりの高校生活じゃん~」
ごねる赤城の頭を押さえながらふと、そうなるかもしれないなと考える。
俺はまだ大した仕事をしていないが、うららなんかはドラマの撮影が始まったようだし、ドラマが放送されたら一気に有名になって忙しくなるだろう。
「……でも、俺も、体育祭で活躍する木野崎、見てみたい」
ひとりでに呟く。
「……期待されても、大したことできねーぞ」
木野崎が苦々し気に言う。
それでも、見たい。
木野崎の家でアルバムを見たことを思い出す。
身長差や対格差の小さい中学の途中までのあのアルバムの中では、たしかに木野崎は一番の旗を持って輝いていた。
今やれば、結果は確かに違うのだろう。
成長期を迎えたα達が頭角を現し、幼少期から長年専門の分野で鍛えたβ達も活躍しだす。何もしていないΩでは、歯が立たないかもしれない。
「でもまあ、スポーツは日頃からしてるじゃん」
「は?俺、なんもやってねーよ」
「やってるだろ。セックス」
ブフォッと木野崎が噴き出した。
喉を詰めたようでケホケホと咳をする。
もちろん、俺とのセックスの話である。
赤城と涼華は平然としているが、うららは顔を赤く染める。
この関係は誰にも言っていないので俺達の話だとは二人も思っていないだろうが、二人とも、光輝もヤることヤッてんだ、と生暖かい視線を送る。
「夜の大運動会、頑張ってるじゃん」
「お前……ッそれ以上言ったら、絞めるぞ」
「エーッ!本当のことなのに!」
「デマだから……お前ら相浦の言うこと信じんなよ」
木野崎が俺の首をキリキリと締め上げる。俺はキュウと意識を失うふりをして見せた。
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