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第四章 第47話
冬のヒートは、結構キツイ。
暑い中でエアコンガンガンに効かせて自慰をする夏のヒートに比べて、寒くて凍りそうだ。それなのに身体だけは火照って熱くなるんだから、落差で風邪を引きそうになる。
学校でも、放課後でも、仕事でも木野崎と一緒に居た俺は、身体どころか心が風邪を引きそうだ。
頻繁にしていたセックスも、ヒートの外出不可の期間だけは1週間弱お預けだ。
どちらか片方のヒート周期がずれていれば、家に通うこともできるが、俺達の場合完全にヒートが被っている。
テレフォンセックスは、前のヒートの時にやってみたことがある。
触れないのが余計に辛くて、会いたくてどうしようもなくなって、でも身体だけは熱を持って疼く悪循環にハマって、やめた。
ヒートが来ないうららは、順調にドラマの撮影をしているらしい。
高校卒業までに来ればいい……そういって励ましたこともあったが、多分あの様子じゃ大人になるまでヒートは来ないんじゃないかと思う。俺達普通のΩとはどこか違う生き物のようで。カラーを付けているうえに、清純派。ヒートの性の欲求に惑わされない、珍しいΩ。貞操観念が低めの種族であるΩにしては売り出し文句に違わない姿だ。
「じゃーん!うららと琉人のゴールデンドラマが決まりました~!!」
ヒートが終わった俺達に、高牧さんが拍手する。
俺とうららをセット売りするという会社の執念は本物だったのか、俺とうららは一緒にゴールデン帯のラブコメドラマに出ることになった。といっても、学園もので、一つのクラスにスポットライトが当たるから、全員名前付きでまんべんなくメインのシーンもあるという、クラスメイトの一人としての出演。デビュー作にしては、上々。主役はクラスの教師役の有名アイドルが張るので、そのアイドルの為にこのドラマをやるようなものだ。
主要キャスティングや企画は随分前からされていたようだが、クラスメイト程度の役ならすぐにキャストが決められるらしい。俺は学校の裏サイトを運営するハッカー少年の役。名前だけでなく、あだ名付き。小さな役とも言い切れないが、メインを張るというほどでもない。
うららのドラマの情報が流れだした。番宣はまだ始まっていないが、主要キャストは既に注目を浴びているらしく、うららも話題の新人女優として有名になった。
「ねぇ、春に放送されるドラマにうららちゃん、出るんでしょ」
「ネットで記事になってる」
「SNSで流れてきたよ」
クラスでもうららに話しかける子が増えた。
それと同時に、俺とうららがセット売りされている記事や動画が広まり出した。
そして俺と同じラブコメドラマにも出るらしいということが、どこからか流出した。
「琉人、うららとは本当に何も無いのよね?」
「え?」
高牧さんのその言葉で、気が付いた。
「これ……」
高牧さんのスマホに表示されるコメント欄を見る。
『お似合いのカップル!』
『本当に付き合っててほしい』
『付き合ってるんじゃないの?』
『Ω同士で付き合ってるんだ』
『男の方は狙ってるだろうな』
有名になりだしたうららだが、俺とのセット売りが今になって響き、無名の俺とうららが付き合っているのではないかという疑惑が流れているらしい。
雑誌などのインタビューでは同じ学校の同じグループの友達だということまで話してしまっているので、奇跡の美男美女カップルだと持ち上げられることに多少の愉悦は感じれど、疑惑を否定する材料が無い。
というか、うららに目を付けたファンたちの中で、俺とうららが付き合っていることにしたいという、カップル萌えというものが流行っているらしい。
俺は、木野崎と付き合っている。
でもそれは他の誰にも分らないことで。
そしたらうららと付き合っていると言われても、否定できない。
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