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第四章 第50話
冬休みが明けて、俺と木野崎の補習も終わり、冬を越えてバレンタインが間近に迫り出した。
「バレンタインデーつって、気、早すぎ!まだ一月だぞ」
木野崎がSNSを見ながら呟く。
「正月終わったら特にイベント無いもんな」
「俺ら3が日以降フツーに学校だったから正月も大して盛り上がんなかったけどな」
話に乗っかる俺と赤城。
ちなみに俺は正月は木野崎の家で姫はじめを無事に遂行し、ヤりすぎて疲れたので二人ともお参りにはいかなかった。
「俺達Ωの為に働いてくれる先生方の偉いことよ……」
「それなーっ」
しみじみ言う木野崎に赤城が同意する。
「でもバレンタインにヒートが被ってたら、絶対盛り上がるのに」
俺の一言に、木野崎が答える。
「俺らはヒート、3月だろ」
「俺は4月」
赤城は1月にヒートが終わったばかりだった。次は2年に入ってからだ。
「アーシはバレンタインとヒート、被るわ」
涼華がなんともないように言う。
「えっ……お前あの怖い彼氏に、バレンタインのプレゼントはアタシ……をやるのか!?」
俺がサッと青ざめながら聞くと、「フツーにチョコやるに決まってんだろが」と足を蹴られた。
うららはヒートがまだ来ていないので、大人しく話を聞いている。
「でも俺、バレンタインがヒートだったら無理矢理にでも1週間木野崎の家に泊まりに行くのに」
「えっ、なんで?光輝の家になんかあんの?」
赤城が反応する。
「ううん……俺達、付き合ってるからさ。俺をあげるの」
「バレンタインがヒートじゃなくて残念だったな」
パコンと教科書で木野崎が俺の頭を叩く。
「えっ……ツキアッテルカラサ??」
「うん」
赤城が呂律の回っていない口で変な音程で俺のセリフを反復する。
「ツキアッテル?」
「うん」
「誰と誰が?」
「俺と木野崎が」
「またまたぁ~」
「マジだけどな」
木野崎が赤城に言った。
「っえええ~~~~!!」
「声がでけえよ!」
叫ぶ赤城を木野崎が教科書で叩いた。
「えっ涼華……っ、うらら……っ!知ってた?気付いてた??」
「全然」
「ううん、知らなかった」
今度は涼華とうららに動揺をぶつけだす。
涼華とうららは初めて知ったという割に物凄く落ち着いている。
「αどもに知られたかねぇから、誰にも言うなよ」
木野崎が3人に釘を刺す。
「OK」
「うん、わかった」
涼華とうららが二つ返事でオーケーする。
「えっお前ら……俺を差し置いて二人で……!?」
「お前は何に衝撃を受けてんだよ」
ショックを受ける赤城に、木野崎が呆れたようにツッコむ。
「俺も混ぜてよ!」
「お前はαの女が待ってんだろ」
「ハッ!そうだった……!」
同性の友達3人のうち一人だけあぶれているみたいで疎外感を感じるのだろう。
涼華もうららもΩの同性だが、男女の性別が違う分赤城とは感じ方も違うだろう。
「えっえっ、いつから?」
「1学期から」
「そんな前から!?……でも、にしてはそんな素振りすら見せなかったじゃん。名前だって、苗字で呼んでるくせに」
「名前ぐらいいつも呼んでるよ」
「いつ?」
「セッ」
俺の頭を再度、木野崎が教科書で叩く。
痛い。
こいつはヤるとなれば滅茶苦茶するくせに、人前ではガードが堅いのだ。俺のことを淫獣だなんだと呼ぶくせに、自分はムッツリなのである。
「はー……」
魂が抜けたような赤城をよそに、涼華が口を開いた。
「どっちが上でどっちが下なの?」
「ん?」
「アーシら女Ωと違ってアンタらは両方いけんじゃん」
当然のように聞く涼華。
俺と木野崎は目を見合わせ、ニヤッと笑った。
「「どっちだと思う?」」
答え:両方!
でもこれは、俺らだけの秘密。
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