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第五章 第56話

 百瀬と共演したドラマは無事にクランクアップを迎えて、放送も終了した。  俺達は高校を卒業した。  俺とうららは高卒で仕事に専念、木野崎と赤城はそれぞれの大学へ、涼華は美容系の専門学校に進む。  ちなみに涼華は卒業と共にあの怖い彼氏と同棲らしい。二人ともヤンキーなので結婚も早いだろうし、涼華は近い将来ヤンママになるんじゃないかと思う。  俺と木野崎はといえば、木野崎は大学近くの部屋で一人暮らしになる。俺は親元を離れ母一人残して一人暮らしをすることにした。  そこで考えるべきなのが恋人の存在。  そう、つまり同棲である。  木野崎の親父さんも俺の母親も、俺と木野崎のことはもうお互いに見知った仲だ。同居するというとすんなりオーケーが貰えた。  これからはヒートになっても同じ部屋で夜を共に過ごすことができる。辛いだけのヒートではなくなるのだ。  春休みに入って同棲を始めた俺達は、いつも通りに遊んで、セックスして、二人で仲良くやっていた。  が、問題が一つ。 「お前、俺のシャツ知らね?」 「うーん……」 「またお前が持って行ったんか」 「……るせ。お前もだろ」  巣材集めである。  俺たちΩは番や求愛相手の服を、巣作りといって寝室や自分のパーソナルスペースにため込む習性がある。  今までは家が別だったのと、会えばセックスしていたので服の収集なんかには気が回らなかったが、同棲し始めると相手の服をかっぱらうことに何の障害もなくなる。  結果として、服がお互いの巣材になって消える。  消えると言っても、溜め込まれているだけなので取り戻せばいいのだが、お互いΩ同士なだけにΩの習性をわかり合えてしまう一面もあり。無理矢理服を取り戻すわけでもなく、取られた服は放置している。  同棲しだして一緒に寝るのがデフォルトになった俺達だが、それぞれの部屋のベッドにお互いの服を溜め込んでいる。どっちのベッドで寝てもどちらかの服が大量に俺達を取り巻いているのである。 「……お前の服に包まれて寝るのは最高だが、自分の服に埋もれて寝るのは正直微妙だ」 「それ、俺も」  木野崎に俺も同意する。 「じゃ、片づけるぞ」 「おう」  仕方なく巣材を洗濯機へ放り込んでいく。 「……離せよッ!これは洗うんだから!」 「……わかってるよッ」  それでも惜しいものは惜しい。  洗濯機へと持っていかれそうになるシャツをグググッと引っ張り合う。 木野崎の匂いに包まれて寝るの、最高なのに。  洗われちまって……。ああああー。  しゅんと拗ねていると木野崎が俺の頭を撫でてくる。 「巣材無くなる代わりに、いっぱいシよ。な?」 「うん……」  現金な俺はセックスに釣られて巣材を開放した。

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