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第8話

学級委員長が教室の前に立って、黒板にチョークで文字を書く。 「それじゃ、文化祭の出し物について話したいと思います!」 「よっ!」 「待ってましたー!」 クラスがどっと湧く。 1年で最も盛り上がる行事が、文化祭だ。 この学校の文化祭は生徒主体でかなり自由に決められるから、みんな気合いが入っている。 「はーい!やっぱメイド喫茶でしょ!」 女子生徒の1人が立ち上がって意見を言う。 「女子のメイド姿はいいけど男はどうすんだよー」 「いいじゃん、男子のメイド姿!おもしろそう!」 「げえ、グロすぎんだろ」 「はい!じゃあ、執事喫茶は?」 「それもいいけど、メイド喫茶も捨て難いなあー」 「じゃあ、ここは多数決で決めましょう!では、挙手制でとります。メイド喫茶がいいと思う人!……次!執事喫茶がいいと思う人!」 委員長の合図で皆がそれぞれ挙手する。 結果は、同数になってしまった。 「じゃあ、いっそ執事とメイド、混ぜちゃうのはどうかな?」 委員長がそう言うと、皆がそれがいい!と全員一致で決定となった。 「メイド役と執事役はどう決めるの?」 「そりゃ、女子がメイドで男子が執事だろ!」 「ええーやだ!つまんないじゃんそれ」 「あたし執事やりたい!」 「じゃあさ、くじ引きで決めない?」 美緒が立ち上がって手を上げた。 美緒の言葉に皆が頷いて、委員長が「では、くじ引きで決めたいと思います!」と大きな声で言った。 即席で作ったくじ箱に1人ずつ紙を引いていく。 メイドを引いた男子がギャーと声を上げて落胆している。 他の男子は「俺女子より可愛いメイドになっちゃかも!」と楽しそうにする奴もいた。 聡介の番がきて、紙を引く。 「どうだったの?」 美緒が横から手元を覗き込む。 「良かった。執事だ」 「なーんだ。つまんない」 ホッとしている聡介の横で美緒が口を咎らせて文句を言う。 「次は美緒の番だろ」 「はーい!あたしは何かなあー」 美緒が箱から引いた紙を開く。 引いてから、にんまりと笑う。 「執事役だ!あたし、聡介よりイケメン執事になってやるわ!ね!柊くんっ」 急に話を振られて戸惑う。美緒が執事か、たしかに美緒の綺麗な顔なら男装しても違和感は無さそうだな。 「そう言われると負けてられないな」 聡介が美緒に向かって、対抗心剥き出しで口の端を上げて笑っている。 なんかみんなやる気があっていいな。 僕はなんだろうか。順番が回ってきてどきどきする。とにかく、メイド役じゃありませんように、と願った。 箱に手を入れて、コレだ、と思うものを掴んだ。 「なっ、メイド役だ。なんで……」 紙に書かれたメイド役、という文字を呪いたい。落胆する僕の横で美緒は何やら嬉しそうににやにや笑っている。 「なんで笑ってるの……」 「やだ、睨まないでよー!柊くんのメイド役絶対可愛いじゃん!」 「柊がメイド役か。楽しみだな」 聡介もそんなことを言う。 「やだ、何ニヤニヤして想像してんの!やらしー」 「はっ?別に俺は想像なんてしてないぞ!ニヤニヤしてるのは美緒のほうだろ!」 「二人とも馬鹿にしてるでしょ……」 流石にムッとする僕に聡介がそんな事ない!と慌てて弁明する。 「あたしだって楽しみなだけだよー!そうだ!あたし男子メイド達のメイク担当しちゃおっかなー!特に柊くんのメイク、して見たいんだよねっ」 そんなこんなで、どんどん文化祭の内容が決まっていった。

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