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第15話
寄れた口紅をみて、眉を寄せる。
「何、された?」
「大丈夫、ちょっとキス、されただけだし、それ以上のことは楠木くんが来てくれたからされてないし……」
ズレたパンツを直して、スカートをはたく。
「くそっ!ごめん、俺がもう少し早く来てたらこんな事」
強く握り込む拳を、両手で包み込む。
「僕は大丈夫だよ、本当。楠木くんが来てくれなきゃどうなってたか……。ほんとにありがとう」
「柊……っ」
ぎゅう、と抱きしめられて肩に聡介の頭の重みを感じる。すこし、驚いた。
こんな風になるまで僕を想ってくれてたんだ。
愛しいな、自キャラに想われるって、なんて幸せなんだろう。
「うん、ありがとう」
******
教室に戻ると、心配していたらしく美緒に捕まえられる。
「柊くんが体育館のほうに男の人と向かってて、体育館ってもう劇終わってるから変だなって思ってたんだよねえ。ま、何事も無かったみたいでよかったけど!」
「ああ、……そうだな」
チラ、と僕を見る聡介。それに頷く。
ほかの人たちには何も無かったということにして欲しい。そう僕がお願いしたのだ。
仮更衣室で化粧を落として、制服に着替える。
ずっと外していたメガネをかける。
どうして度の入ってないメガネをかけいるのか、今日少し理由がわかった気がする。
女顔だから親が心配してメガネ掛けろって言うんだろうな。
聡介は僕が一瞬聡介を名前で呼んだことに特に何も言わない。だいぶ興奮してたし、気づいてないのかな?
俯きながらそんな考えを巡らす。
聡介がじっとこちらを見ていることなんて気付かずに。
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