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第27話
夏休みが開けて、登校初日。
今朝は、聡介からメッセージで『迎えに行くから住所を教えて』と来ていて位置情報を送っていた。
宿題は、あのあと何度か美緒と聡介と3人で勉強会をしたおかげで余裕で終わらせることが出来た。
あれから聡介とは、時折二人で部屋で遊ぶ、という名目で肌を触れ合う関係が続いていた。
インターホンがなって玄関を開けると、聡介が立っていた。
「おはよ、柊」
朝から爽やかな笑顔で迎えられて、僕はなんて幸せなんだろうか。
「おはよう、楠木くん」
隣を歩いていると、指に手が触れる。
じり、と熱を感じて離したくないけれど、指を絡める勇気が出ない。
そんな僕に、聡介が指を絡めて僕の手を握った。
俗に言う恋人繋ぎだ。
驚いて顔を上げると、聡介と目が合ってふ、と笑いかけられる。
「この繋ぎ方、ちょっと恥ずかしいよ」
「俺たち、付き合ってるんだからいいだろ」
付き合っている、と声に出して言われるとなんだかむず痒くなる。
そうか、付き合ってるんだな。
夏休み中、何度もこの手で身体を触れられた感覚を思い出して、恥ずかしくなって顔が熱くなる。
「顔赤いな、何思い出した?」
「っ、何も!」
「そうか?」
二人並んで学校の門をくぐる。女子達の視線が痛い。手を離そうとしているのに、聡介が離してくれない。
「ねえ、変に思われるよ」
「別に変じゃないだろ。付き合ってるんだし」
「ちょ、声大きい!」
慌てて小声で聡介の耳に顔を寄せて言う。
そんな僕をじ、と聡介が見つめる。
手を繋いでいないほうの手で、そのまま顔をぐい、と寄せられてそのまま唇を奪われた。
「なっ、なにす」
「ごめん、でも柊は俺のって事、これで皆に伝えられるだろ?」
強い独占欲を隠そうともしない聡介に、少し怖くなる。じ、と綺麗な薄いブラウンの目で見つめられて、心臓がバクバクとうるさい。
やっぱり聡介の整った顔にいつまで経っても慣れそうにない。
「きゃー!どういう事なの!?」
「え、いま楠木くん、き、キスしたよね!?男に!」
「あたしは……そういうの全然アリだけどね!」
女子たちが嘆き狂う声が周りから聞こえてくる。
それと同時に何だか応援する声も聞こえてきたような気もする。
逃げるよに聡介を引っ張って教室に入ると、美緒が驚いたような顔で僕たちを見る。
「やだ、手繋いじゃってアツアツだねー」
そう言われてハッとする。ここに来るまで手を繋いだままだった。
益々噂が広がるに違いない。
「そんなに嫌だったか?」
頭を抱えて蹲っていると、聡介の少し落ち込んだような言い方に、ハッとする。
「ううん、でも何か、色々急だったから」
「なによ。別に今どき男同士付き合ってたって珍しくも何ともないでしょ」
美緒があっけらかんとした態度でサラッとそんな事を言う。
「堂々としてりゃ誰も文句言わないって。隠す方が変に噂されるし、そっちのが嫌でしょ」
「ま、まあ、それもそうか」
「だろ?」
美緒の妙に納得させられる言葉に、僕も頷く。
そんな僕に聡介がホッとした顔をする。
周りにどう思われるかよりも、聡介の気持ちの方が大事だよな。
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