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第28話

夏も終わりに近づき、今朝の気温は少し寒さを感じる程だった。 昼間は相変わらず熱いけど、以前ほどの湿気はない。 あれから聡介と僕が付き合っているのは周知の事実となった。たまに物珍しそうな目で見てくる生徒もいたけど、どちらかというと女子達に睨まれる視線の方が痛かった。 あれだけ人気者だった聡介の隣にいるのだから、それも仕方ないかと受け入れている。 昼が近づいてきて、頭がぼーっとする。 いわゆる季節の変わり目に、風邪をひいたかも知れない。 今朝熱を測った時は平熱だったけど、ズキズキと痛む頭に予感が確実になっていく。 こんな日に限って体育の授業がある。 更衣室で着替えていると、聡介に声を掛けられる。 「大丈夫か?顔色悪そうだけど」 「ああ、まあこれくらいなら全然」 体操着に着替えて、聡介を横目で見る。 そうか、とあまり納得してない様子だけど、無理には何も言ってこない聡介。 僕の気持ちを尊重してくれるそんな所も好きだ。 「何かあったらすぐ言えよ」 「うん、ありがとう」 皆体操着に着替えを終えて、グラウンドに移動する。 今日の体育はサッカーで2チームに別れて僕のいるチームと聡介のチームとで対戦する。 重い足を動かして、なんとかみんなの動きに着いていく。 聡介が僕を心配そうにみている。 同じチームの皆は運動神経の悪い僕にボールを適度に回してくれる。それが嬉しくて、答えようと無理をした。 頭がガンガン痛む。 昼間のまだ強い日差しの太陽が僕のなけなしの体力を奪っていく。 視界が、いきなり白く霞む。 身体がふわ、と浮いたような感覚がして、倒れ込んだのだと分かる。 地面の砂が熱い。駆け寄ってくる聡介の姿がぼんやりと分かる。 僕はそのまま意識を手放した――。 ****** 『明日美は、タイムカプセルなんて書いたの?』 『んー?好きな人とずーと一緒にいれますように、的な?』 『え、まって、明日美好きな人いるの?』 『さあ、どうかなあー』 そんなメルヘンなことを明日美が書くとは思えなくて信じられない。 ふふ、と悪戯に笑う明日美に何故か心がザワつく。 明日美には、本当に好きな人が居るんだろうか。 歩いていく明日美の腕を掴もうとするけど、届かない。 水の中を歩いているように重くなる足に、明日美との距離がどんどん離れて言ってしまう。 明日美――。 もう二度と会えないのかと思うと涙が頬を伝った。

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