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第30話

目を覚ますと、白い天井に白い仕切りのカーテンが見える。 まさか、現実に戻った――? ハッとして起き上がると、横に聡介が寝ていた。 僕の手を握ったまま、すやすやと寝ている。 その光景を見て、心底ほっとしている自分がいた。 あんな夢を見たのに薄情だな、と少し自己嫌悪になる。 明日美――。 もう会えないけど、僕の、康太の、いちばん大切で大好な人。 元気にしているだろうか。 あんなに泣いていた明日美を一人にしてしまったことは、今もずっと悔しくて悲しい。 でも、今ここで元気に過ごすことが、少しでも明日美の為なんじゃないかと思っている。 「ん……起きたか。体調は?」 目を覚まして、寝起きで少しぼんやりした表情で僕を見上げる聡介。 「もう大丈夫だよ。僕、倒れたんだよね……ごめん迷惑かけて」 「みんな心配してたぞ。あんまり無理するなよ」 「うん、ごめん」 「なあ、柊。お前の一生懸命なところが好きだ」 突然そんな事を言い出すから、どき、とする。 「う、うん」 「だから、あんまり謝るな」 「ご、……ありがとう」 「ん」 また謝りそうになったのを飲み込んでありがとうといった僕に、目を細めて笑って、わしゃわしゃと髪を乱すように撫で回される。 「あのさ、柊」 撫でていた手をやめて、起き上がって向かい合うように座り直す。 何を言い出すのか待っていると、ガラッと保健室のドアが開いた。 カーテンを開くと、体育の先生と保健の先生が立っていた。 「柊!起きたか!ごめんな、先生柊が体調悪いこと全然気づかなくて!」 「ほんと、しっかりしてくださいよ先生。教育委員会に報告されて大問題になってもおかしくないんですからね」 「いや、僕が元々体調悪かったことを申告してなかったのがいけなかったんです!教育委員会とかそんな、やめてください!」 まさかそんな大事になるような事だと思っていなくて、慌ててそういって担任を庇う。 「まあ、柊くんが申告しなかったのも原因だし、今回はこの場で収めておきますね」 保健の先生がそう言ってくれて、心底ホっとした。 「ひいらぎ!ごめんなあ」 体育の先生がそう言っておいおいと泣いている。 「ふは、先生泣きすぎ」 聡介がなきじゃくる先生をみて可笑しそうに笑う。 そういえば、さっき、聡介は何を言いかけたんだろう。 気にはなったけどまた言いたくなったら言うだろうと思って、自分から聞くのは辞めておこうとその場は何も言わないでおいた。

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