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地球とさよならをした男 4

人生に求めていたのは華やかさでも派手さでも、 ましてや行き過ぎた裕福さや権力でも無かった。 好きな人と穏やかに暮らしたい。 好きな人に好かれたい。 井小田リクヤの願いはただそれだけだった。 しかし、生前それが叶うことは一度も無かった。 神と呼ばれる存在がいるのであれば、たった少しの慎ましやかな願いすら叶えられず それでも自ら命を投げ出すこともなく 懸命に明るく振る舞い、働き、生き、不幸にも難しい病で命を散らした井小田を哀れに思ってくれたのだろうか。 物心がついた時、井小田はそのような事を呆然と考えたものである。 日本は無宗教の人間が多く、井小田も例に漏れずクリスマスはケーキを囲み正月には神社へと行き葬式にはお経を唱えさせられるような人間だった。 魂だの輪廻転生だの前世だの、信じたい人がいればそれは自由で誰が邪魔できるものでも無いが 井小田自身はそれらはエンタメ程度にしか思っていなかったのも事実だ。 朝のニュース番組の星座占いのように、あったらいいね、ぐらいのもので。 しかし、明らかに日本とは違う建造物に部屋の様子。 そして声をかけてくる大人達の見た目や服装や言語。 明らかに生前には感じなかった身体の感覚や現象。 何よりもそれを“違う”と感じる自分の確かな感覚だ。 それは、そうではない世界を知らないと抱けない疑問だったから。 井小田は10歳になる頃、自分の中で一つの仮説を立てた。 これって、異世界転生じゃね? ……と。 そして 多分これって ファンタジー系BLゲームの中じゃね???? ………と。

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