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花の主人公 1
“イオン”はこれまで同い年くらいの人間と触れ合う機会がほとんど無かったが、
35年分くらい予め経験を積んでいた甲斐あってか
2ヶ月も経てばそこそこ学園に溶け込んでいた。
十家の人間というだけで、
下位貴族達はぺこぺこしてきてそこだけがちょっとやり辛かったが
友達や顔見知りも出来たし、魔法について学ぶのも普通に面白いと思えた。
何よりも井小田時代の学校生活といえば、
元々の性格が楽天的で無ければ普通に手首を切り刻んでいた事請け合いな状態だった為
その地獄を作り出した要因がこの世界ではなんの枷にもならない事がイオンにとっては、
いや、井小田にとっては天国とも感じられた。
この世界には男しか居ないので、
恋愛対象者も結婚対象者も性的欲求を抱く相手も男しかあり得ない。
現代日本ではマイノリティ、
時には異端児扱いだった同性愛者という性質がここでは普通なのだ。
誰を好きになっても可能性が0ではない世界。
男が好きでも普通に仲良くしてくれる友達。
故に、失われた青春が取り戻せるかもしれないという淡い期待を抱きながら
イオンは学園生活を謳歌しはじめていた。
そう、その編入生がやって来て
これがBLゲームの世界だと思い知らされるまでは。
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