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花の主人公 3

「えっと…」 リウムは、ただメロンソーダ色一色にベタ塗りされているような瞳とは違って 何十時間かけて塗ったんすかというような金色の大きな瞳を大きく開き戸惑ったように突っ立っている。 両手に大きな鞄を抱えているので、イオンはどうにか自分の脳を叩き起こして微笑んだ。 「あー、そっち側のベッドと机でもいいっすかね…」 「はい!どこでも!」 元気よく返事をすると、リウムは空いているベッドの方へと歩いて行き荷物を床に下ろした。 流石貴族向けの学校というだけあって部屋は結構広かったが、それでも同じ空間に主人公みたいな奴がいるのは変な感じだった。 イオンはどこかそわそわしながらも自分のベッドに腰を下ろして、荷解きを始めるリウムの姿を眺めてしまう。 するとリウムと目が合ってしまい、彼は不安げに眉を下げているのでイオンは慌てて笑顔を浮かべた。 「……と、途中から入ってくるのって大変よね…」 咄嗟につい生前染み付いた癖が披露されてしまうがリウムは眼をくるくると輝かせながら、いえ、と呟いた。 「僕みたいな孤児が、ハートン学園に通えるなんて夢のような…、とても名誉ある事です」 「…でも魔法使えるんでしょ?」 「……そうですね…僕が魔法を授かっていた事がわかって… それで、孤児院に寄付をして下さっていたジョルシヒン伯爵様が後継人になってくださったんです。感謝してもしきれません」 リウムは荷解きをしながらも眉を下げて微笑んだ。 そのどこか泣きそうな顔は一枚絵なんだろうなと思うくらいの可愛らしさである。

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