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花の主人公 4
「…一般庶民が魔法を授かるなんて畏れ多いことだと分かっていますが…」
「そうなの?」
「魔法は神が皇帝にお与えになられたもので…
卑しい身分の人間が得るなど本来許されない事だって教えられて来ましたから…」
授業で歴史について少し学んだが、
この世界の設定としては魔法というのは神が始皇帝に授けたもの、という事らしい。
始皇帝は自分の家臣だった十人の貴族に魔法を分け与え、それが今では十家と呼ばれる上位貴族と言うことだ。
それらの子孫は分家となり、別れていったが魔法を分け与えられた貴族達の子孫のみが魔法を受け継いでいると考えられており
基本的には貴族=魔法を受け継ぐもの、となっているらしい。
しかし勿論何百年も前の話なので、子孫の動きの全てが把握されているわけもなく必ずしも貴族だけが魔法を授かるわけでは無いというのが現代の状況らしかった。
勿論庶民出身者が魔法を授かるのは稀のようだが、
貴族の中には純血主義みたいな人間もいるのかもしれない。
「イオン様のご迷惑にならないように努めます…」
「様なんていらないって。
…それに別に魔法が使えることには変わり無いんだから遠慮する必要はないんじゃないかな…」
「え?」
「いやだから…ここはちゃんと魔法を正しく使うのを学ぶ場所じゃん?
貴族とか身分とかあんま関係ないというか…?」
18年貴族の坊ちゃんをやっているとはいえ、あまり身分格差など無い現代日本で35年余り生きてきた蓄積の所為で
やっぱり身分とかそういうものには慣れない。
他の貴族は庶民に対して各々立場的な解釈があるようだったが、イオンはそう言った概念自体が欠落している感じもした。
そもそも両親もあまり貴族だからと偉ぶっている様子もなかったし、
立場があるのだから悪しき事はしてはならんぞと厳しく己を律するようには言われてきたけど
庶民を見下すようになんてことは教わらなかったのだ。
「イオン様…」
リウムはどこか泣きそうに目を煌めかせている。
同じ部屋にいる人間にずっと様付けされたり偉い人扱いされるのは気が休まらないので辞めてほしくてつい言ってしまったが
そもそも主人公のきらいがあるリウムはきっと何か
そういう立場とかひっくり返るようなものを持っているに違いないと思ってしまうイオンだった。
「様付けやめてって」
イオンが笑うとリウムは頬をバラ色に染めながらも頷いた。
「……分からないことあったら何でも聞いてね」
「ありがとうございます…!」
もしかすると彼によく思われなかったら大変な事になってしまうかもしれない。
イオンはそんな予感を感じてしまうのだった。
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