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花の主人公 7

「“光”の授業は確か3階だったかな。 …もう一つは?」 「…それが、まだ分からなくて…」 「え?そうなの?」 「……僕の魔力が弱すぎるからか…まだ測れないみたいで」 リウムは俯きがちにボソボソと呟いている。 イオンはそこら辺のシステムはよく分からなかったので、まだ解放条件満たしていないのかなぐらいに考えてしまった。 「そっか…まあ、いいんじゃない?そのうち分かったらいいね」 イオンが微笑むと、彼は口を歪めながらも頷いた。 そのウサギちゃんみたいな表情は、たぶん受けとかいうやつなんだろうな、と邪推してしまう。 ボーイズラブ用語はなんとなくしか分かっていないが、イオンはネコかタチかで言えば自分はタチ寄りなんじゃないかと思っていた。 そもそもキスすら碌に出来た試しがないので考えても無駄な事ではあるけど。 リウムの唇はぷるっとしていて、 別にリップなんかは塗っていなさそうだが果物みたいに瑞々しく見えた。 揶揄われて、好きでもないちょっとチャラついた男子にファーストキスを奪われた事を思い出してしまい イオンは内心ため息を溢しながらも机の上にノートと教科書を広げた。 当時はふざけて、ラッキー、なんて笑うしかなかった。 でも本当は男とキスがしたいわけではなくて、好きな人と、したかったのだ。 「……イオンくん?大丈夫…?」 もう井小田という人間は骨になって冷たい墓石の中にいるのかも知れないのに、 今更傷付き始めてしまった。 リウムに心配され、イオンは苦笑しながらも教科書のページを彼に見せてあげた。 「…大丈夫よ、ありがとう。 …えっと、この授業は今日ここからね、25ページ」 今日から授業に参加するリウムが少しでもついていけるようにサポートしてやらねばならない。 それは邪な企みではなくて、普通に人として、よいクラスメイトとしての勤めだ。 別に恋愛なんてできなくたって、 普通の、楽しい学園生活を送りたかった自分への、追悼みたいに。

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