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麗しの婚約者 1
同じクラスの光の授業を受ける生徒にリウムの事を頼み、
イオンは自分が受ける疎通の授業の教室へと向かった。
1年生の疎通の授業は何故か地下にある教室で行われており、
天井からぶら下がった鳥籠みたいなランプに怪しく照らされた如何にも魔女の部屋といった感じの雰囲気の教室だった。
担当する教師も、足元まで覆うようなローブに身を包んだ老人で本当に絵に描いたような魔法使いといった風体の先生だった。
実用性があるのかどうかよくわからない疎通魔法だが、
意外にも生徒は多くいつも15人くらいは参加している。
イオンは井小田よりも恵まれた体格を誇っていたので、いつも大体後ろの方の席に座っていて今日も例外ではない。
机は二人掛けだったが、二ヶ月も経てば大体座る席は固定されてきており、
イオンは一人で二人掛けの机を陣取っている形だった。
授業開始ギリギリの時間に、一人の生徒が教室に飛び込んできた。
その姿に教室内は一瞬どよめきが起こる。
黒いカッターシャツにネクタイにジャケットにローブといった大体同じ制服を着ているのにも関わらず、
その凛と伸びた背筋とオーラには息を呑んでしまう程だった。
彼は急いで入って来たはずなのに、纏う空気によってまるで時が止まったように感じられる。
彼は紫色の瞳で教室の中をざっと見渡すと、優雅な仕草で歩き出す。
その洗練された所作はクラシックでも聞こえてきそうだ。
「レンシア様だ…」
「今日も麗しくいらっしゃる……」
教室の方々からTheモブの台詞が聞こえてくる。
紫色の瞳の生徒はイオンの隣へとやってくると、小さく首を傾けた。
サラリと金色の髪が動いてその描き込み方は明らかに重要人物のディティールだと感じる。
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