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麗しの婚約者 5
疎通の授業を終えて地下室から這い出ると、日光の明るさに目が眩んで思わず片手で顔を覆ってしまう。
この世界にも太陽らしきものはあるらしく、
果たして地球と同じく太陽系の星なのだろうかと疑問に思うイオンだった。
「あの…リチャーデルクスさん」
後ろから声をかけられ、イオンは振り返った。
階段を駆け足で登ってきたのは、先程隣の席だったレンシアだ。
段差を駆け上がる様すら絵になるのはどういう了見なのだろうと思ってしまう。
「先程は…助けていただきありがとうございました…」
「いえいえ、助けたというほどでは。余計なことだったらすみません」
「余計だなんて…」
明るい所で見ると彼の金髪はキラキラと眼球に突き刺さってくる。
まるで彼自体が発光しているようにも見えて、イオンは思わず目を細めてしまった。
「…勉学に夢中で授業を聞いていないようでは…いけませんね」
レンシアはそう言いながらもどこか泣きそうな顔で俯いた。
「レンシアさんくらいになると、あんな授業幼稚園児向け、みたいなものですよねぇ」
「…そ、そういうわけではありません…」
「良いんですよ。ただでさえ大変というか…
どこでも注目されてみんなに期待されるってしんどいっすよね」
彼がサボっているわけではなく、何かもっと難しい事を学んでいるであろうことはなんとなく察していた。
次期皇帝の嫁というのはとても大変なのだろう。
レンシアは少し驚いたようにイオンを見つめてくる。
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