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麗しの婚約者 6

「こういうイージーな授業くらい手を抜いてもいいと思いますよ」 35年と18年くらいを一度経験してしまったイオンはついつい舐めた口を聞いてしまう。 今でこそ同い年だが、18歳なんてまだまだ子どもだし。 レンシアは、やっぱりグラデーションのように細かい色遣いで塗ってありそうな紫色の瞳を細めて微笑んだ。 「……期待して頂いている以上、努力せねばなりません それはどのようなものでも例外なく… でも……ありがとうございます」 入学当初から注目の的だった彼は間違いなく一軍の人間で 関わり合いなどない遠い人のように思えていたけど、こうして話していると同じ普通の生徒なのだと感じる。 ゲームのキャラとはいえ一応生きているのだろうし、彼なりに苦悩もあるのだろうと思うと助けて良かったのかもしれない。 「まあ……あんま、無理せず」 イオンはそう言いながらも、ぺこ、と頭を下げて教室へと戻るべく歩き出した。 雰囲気的に彼は頑張り屋さんなのかもしれない。 さっき隣を盗み見た時にノートにはびっしりと細かい文字が並んでいたし。 頑張るのは良いことだけれど、変な病気にかかって死んだらおしまいなのだ。 立場のある人にあんな事を言って、何がわかると思われたかもしれないが 井小田の悲惨な幕引きを考えると、 やっぱり無理をしすぎると気付かないうちにおかしなことになりかねないから。 イオンも、次こそはもう少し長生きしたいものだと思っているのだった。

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