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全ては同時に存在している 1

その日はやっぱりリウムの話題で学園中が持ちきりだったようだ。 学校という狭いコミュニティはどんな世界でも大体似たような環境になりがちなのか、 ちょっとした話題に誰しもがすぐに飛び付く。 庶民が編入してくるという異例に加えて、 どうやら主人公らしく光の魔法の授業で何かをやらかしたらしい。 そして同じ授業に参加していた次期皇帝スカイ・エルメーザに 一目置かれたとかバトったとか生意気言ったとかで、ますますリウムの話題はトレンド入りしている。 部屋に戻ってくるとリウムは疲れたようにため息を溢しながらベッドにダイブしている。 「はぁ…どうしよう……僕…殿下を怒らせちゃったかも……」 リウムは恐ろしい事を言っている。 詳細はよくわからないが主人公あるあるの、 僕なんかやっちゃいました的なやつだろうなとイオンは適当に予想した。 「大丈夫じゃね? 一応学園内では身分差は関係なしってなってるし」 皇帝家であろうと上位貴族であろうと在学中は皆平等というのが一応ハートン学園の決まり事であった。 貴族同士で家の確執など気にしていたら勉学どころではなくなってしまうので そういうルールがあるのだろうけど、確かに人間は皆そう物分かりがいいわけではない。 ましてや次期皇帝ともなれば否が応でも気を遣ってしまうだろうし。 「うーん…みんながみんな…イオンくんみたいに優しかったらいいけど…」 項垂れていた彼は起き上がったが、枕を抱きしめながらもこちらを見つめてきてあざとい愛らしさを溢れさせていた。 いうても無防備な姿に耐性の無いイオンは跳ねる心臓を誤魔化すようにニヤニヤと笑った。 「でしょ?男には優しいのよね。男にだけね?」 「……うん……?」 「あ……そうだった…関係ねえんだった…」 困った時はそういうわざとらしいゲイキャラでギャグ化して乗り切っていたが、ここでは一切通用しないのを思い出し イオンは頭を掻きながら苦笑した。

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