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全ては同時に存在している 2
「ふふ。ありがとう。
慰めてくれようとしてるんだよね」
リウムは昨日はあんなに畏まっていたのにもう打ち解けたような話し方をしてくれている。
まさに人たらし系の主人公だなと言わざるを得ない対応にイオンは肩を竦めた。
「僕は…魔法の勉強ができるだけで充分幸せだけど…
…でも、ジョルシヒン伯爵様に迷惑がかからないようにしなきゃね…」
伯爵の支援を受けてここへ通っているリウムは、貴族同士のいざこざに巻き込まれるわけにはいかないのだろう。
ゲームの世界だったらそこら辺はご都合主義なのではと思ってしまうが、
目の前の存在が本気で考えている事には変わりない。
レンシアもそうだった。
だからと言って、生きている以上は今の苦しみが無くなるわけではないのだ。
「何かあったら俺も助けられないか考えるから、あんま気にすんなって。
ほら俺一応十家?だし?」
立場をひけらかすと、リウムはくすくすと笑ってくれた。
「さっき身分差は関係ないって言ってたのにぃ…」
「それはまぁ、ケースバイケースで?」
「わぁ、頼もしーい!」
そうやってリウムと笑い合ってると、失われた青春が戻ってきているみたいで嬉しかった。
同じ学校の友達と、寮生活をして、勉学に励みくだらない話をして笑い合うなんて。
いじられキャラとして必死に立ち回っていた事を思うととても健全に思えてしまう。
「なんか元気出てきた…ありがとう、イオンくん」
「いーえ、どういたしまして」
素直にお礼を言ってくれるリウムに、単純に良い子だなと思えてしまう。
やっぱり一生懸命で頑張ってる姿は応援したくなるし、それはまさしく主人公といったところかもしれないけど。
もしも彼がこれからBLゲームの主人公らしく立場を跳ね除けた大恋愛をするのであれば、
友達として支えてあげたいとも思える。
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