「………ん…？待てよ…次期皇帝…？」 イオンは不意に違和感を感じて思わず腕を組んでしまった。 編入初日でいきなり次期皇帝と接触なんて、 ゲーム的展開を考えると…。 もしかすると次期皇帝も攻略対象とかいうのに入っていたりするのではないだろうか。 次期皇帝も当然入学初日から目立ちに目立ちまくっており、 別のクラスで良かったと思えたくらいだった。 振る舞いは威厳があるし、顔はあり得ないくらい美形だし、 立場も加味すればそんなの、目玉キャラくらいの存在だろうし。 きっとパッケージには一番でっかく描かれているに違いない。 しかし次期皇帝には婚約者がいて。 「………。」 BLゲームが一体どういう雰囲気なのかはわからないが、そんなに、ドロドロした感じなのだろうか、と。 もっとポップで爽やかな感じに勝手に思っていたが、 でも確かに女子向けと言われれば昼ドラのような展開もないとは言えないし。 あの優雅なレンシアと無垢なリウムが次期皇帝を取り合って髪の毛を掴み合うような喧嘩なんてしないとは思うけど、と勝手に心配になってしまう。 だけど、邪気の一切ない無垢な瞳で不思議そうに見つめてくるリウムに気付くと考えるのを一旦やめておくことにした。 「…あ！そういえば僕先生に呼ばれてたんだった…！ ちょっと行ってくるね！」 リウムは何か思い出したように飛び上がると、足早に部屋から出て行ってしまった。 何かチュートリアルの続きだったのだろうか。