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緋色の殿下 3

「さ、教室に急ぎましょ。遅れちゃうわ」 そう言いながら歩き出すと、リウムはにこにこと笑ってくれる。 「どうして時々妖精口調なの?」 「…ん…?妖精ってこんな感じなん…?」 また他愛もない話をしながら廊下を歩いていると、 廊下でぺちゃくちゃと喋っていた生徒達が口を閉ざしさっと壁際へと張り付いている。 反射的に二人は立ち止まってしまい生徒達の視線を追って後ろを振り返ると、 後方から明らかなオーラの塊の男が歩いて来た。 背丈はイオンの方が高いはずだが、廊下が更に狭く見えるくらいの存在感。 漆黒の黒髪に、深紅の瞳。 それは鋭くも美しく輝いており、その視線に晒されれば石になってしまいそうな程エネルギーを放っている。 それなのにその所作は上品で 、同じ制服なはずなのにグレードが三つぐらい上の上質なものに見えてしまうくらいだった。 「エルメーザ殿下だ…」 「なんて凛々しい…」 申し訳ないがモブというものは全ての状況を説明してくれるので大変便利である。 しかし一応国の超重要人物で、 現代日本で考えてみれば皇室の方が向こうから歩いて来ているようなものなのだ。 学園内でもそうすべきというルールがあるわけではないが、 二人は他の生徒に倣って壁際に避けて道を譲ってやる事にした。

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