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緋色の殿下 4
スカイ・エルメーザ次期皇帝は今の皇帝の嫡男で下に兄弟もいるようだったが、
彼が長兄なので当然継承権は一位という事になる。
顔面の偏差値もさることながら、当然学業においても常にトップであり、
逆に学園で何を学んでいるのかというくらいのものである。
本当に石になったように固まったまま惚けた表情で壁に張り付いている生徒達を総スルーして、
エルメーザは涼しい顔で廊下を歩いていく。
その三歩後ろくらいを、婚約者のレンシアが追いかけている。
レンシアは相変わらず優雅に見えたが、
長い足でさっさと歩くエルメーザに追い付くためにちょっと小走りのようになっていた。
「悔しいけど…お似合いだよね…」
「朝から目の保養ですなぁ」
ここに女子がいたならばもっとわーきゃーとなっていただろうが、
男だらけの異世界では皆ぼそぼそと喋っている。
イオンはあんまりジロジロ見るのも失礼かと思い、
壁際に立ったまま若干俯きがちで彼らが通り過ぎるのを待っていた。
しかしエルメーザは他の生徒には目もくれずに歩いていたのに、何故か二人の前で足を止める。
当然廊下内はざわざわとなり、
イオンは何か怒られるのかと恐々と次期皇帝の御尊顔を見上げた。
しかし彼の深紅の瞳はイオンの隣に注がれている。
「……お前は…」
耳が孕むで有名な人気声優みたいな低音ボイスでエルメーザが呟く。
声をかけられたリウムは戸惑っていたが、やがて笑みを彼に向けた。
「おはようございます…殿下……
その…昨日は…ごめんなさい…」
リウムは謝ったが、エルメーザは無言で彼を睨み下ろしている。
次期皇帝ビームを浴びているリウムを救い出してやりたかったが、
流石にバカのふりをして間に入れるような空気ではなくて
リウムには主人公補正があるからとたかを括っていたが、現実的に、普通に不敬罪とかで投獄になる場合もあるだろうか。
そう思うと無駄にハラハラしてしまう。
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