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いきづまる 2
誠に勝手な偏見だが、
BL世界の子作りなんてファンタジーよろしく
なんかよく分かんないけど女性と同じく妊娠できちゃいました的なものなのだろうかと思っていたが
ななさいでもわかるといっておきながら数学の本ですかというくらい数式が並んだ難しい内容に眉根を寄せてしまう。
だがざっと読んだ感じでは、
哺乳類のように体内で人間を生成する事もなければ
魚や鳥みたいに卵やなんかで生まれることもないようだ。
魔粒子と呼ばれるエネルギーを使って人間を錬成するような、
どちらかというと錬金術に近いのかもしれない。
赤ちゃんの作り方、というのは地球で言えば
ある意味エロ本なのだがこの世界のはクックパッドのように思えてきてしまう。
セックスのセの字も出てこないし、
もしかすると本当はBLゲームなどでは無くて寧ろそういうのが全くない世界なのだろうか。
ローラに解説してもらえれば分かりやすいだろうかと思うが、
一応同い年の友達に聞いてもいいのかと悩んでしまうイオンだった。
小一時間ほど色々読んで理解しようとしたが、疲労が蓄積していくと
そもそもそういう機会に恵まれるかどうかも分からないのに、と幾らか悲観的に考え出してしまう。
現代日本でもマイノリティ同性愛者をやっていた井小田は、
そもそも結婚だの子どもだのは諦めていたのだ。
地球の技術では錬金術や魔法どころか男同士で子孫を残す方法などはまだ確立されていないし、
現代日本では結婚すらもちゃんとした制度が無いに等しかったから。
それ以前に恋人すらも出来ていなかったので井小田の悩みは別ベクトルだったと言える。
「あー…だめだめ…相手すらいないのに何やってんだか…」
イオンは自虐しながらもため息を溢し、本を棚に戻しては肩を落とした。
とはいえ夢中になっていたらしく外はすっかり日が傾いており、図書室内は薄暗くなっていた。
灯りがあるとはいえ人気もない為静まり返っていて、
どこか寂しい雰囲気に変わってしまっている。
そう感じるのはイオンの心情が虚しさに染まっている所為もあるのかもしれないけれど。
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