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いきづまる 3
恥ずかしさゆえに図書室の奥の方へと引っ込んでいたイオンは、図書室の出入り口へ向かおうと歩いていった。
入り口付近には広めの長机がいくつか設置してあり、自習スペースとなっているようで
そこら辺は元いた世界に近しい光景だった。
だけど、学園は巨大な西洋風の古城なため
どちらかといえば海外っぽさがあって、海外に行ったことのないイオンにとっては映画の世界にも思えてしまう。
出入り口近くまで戻ってくると、自習スペースの端っこにぽつんと人影があった。
ランプを手元に本を積み上げて、何かを必死に書いている横顔。
それは、次期皇帝の婚約者であるレンシアだった。
図書室にはもう自分と彼しか残っていないようだったが、
レンシアは気に留める様子もなくペンを走らせている。
こんなに遅くまで自習をしているのだろうか。
まさか趣味でBL小説を書いている、なんて事はあるまい。
積み上がっている本は難しそうな魔導書に見える。
“大天使の生まれ変わり”、主人公と同じくらい選ばれた存在に思えるが
期待して頂いている以上は、と彼が言っていたのを思い出す。
国の、国民の期待を背負って、
こんな風に人知れずに努力しているのだと思うと、ステータスなんてただのラベルでしかなくて。
だけどやっぱり人間は簡単に、ラベルだけで判断してしまいがちな生き物だ。
無理はしないで欲しいなと思いながらもイオンはそっとしておく事にして図書室を出ようとした。
しかしドアを開けた先には初老の男性が立っていて、イオンを見ると眉根を寄せた。
「まだ残っていたのかね」
「あ、はい…えっとまだ他にもいます…」
「はぁ…全く…私も暇ではないんだがね」
図書室を管理しているらしい男性にジロリと睨まれ、イオンは苦笑した。
「あの…俺が鍵、閉めておきましょうか?」
中にはまだレンシアが残っているし、彼が怒られるのは可哀想な気がしてかって出ると
男性は暫くイオンを睨んでいたが、やがてポケットから鍵を取り出した。
「鍵は返却口の中にでも入れておいて構わない。
あまり遅くなりすぎないように、いいね?」
男性はそう言ってドアの外側に置いてあった貸出本の返却用のボックスを指差した。
鍵を受け取ってイオンが頷くと、男性は帰っていってしまった。
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