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いきづまる 4

イオンは図書室内に戻り、相変わらず何かを書いているレンシアの元へと近付いた。 彼の手元のノートには数式のようなものがびっしりと並んでいて、やはり勉強をしていたようだ。 「……あの、レンシア、さん」 イオンが恐る恐る声をかけると、彼は驚いたように顔を上げた。 「えっと…そろそろ帰りなさいって…管理の人が」 「あぁ…、そうですよね。すみません…、すぐ、片付けます」 レンシアは小さな声で溢すと、慌てた様子で開いたまま置いてあった本を閉じた。 「俺が鍵預かってるんで、ゆっくりでいいですよ」 イオンが声をかけると、レンシアは小さく息を吐き出し 少し落ち着いた様子で筆記具を片付け始める。 レンシアの顔には疲れが見えて、近くで見ると寝不足そうにも感じた。 「…頑張るのは良いことだけど…無理のしすぎは良くないというか…」 その顔は鏡の中の井小田のようで、イオンはつい口を出してしまった。 「今朝は…怖がらせてしまいましたね」 レンシアは優雅な仕草で机の上を片付けながらも、どこか申し訳なさそうに呟いた。 エルメーザに次期皇帝ビームを打たれたことだろうかと思い至ると、あー、とイオンは苦笑する。 「助けてくださったんですよね。ありがとうございました」 「…いえ…今朝は…エルメーザ様は少し気が立っておられて…」 彼はそこまでいうと、小さく息を吐き出した。

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