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いきづまる 5

「…普段は機嫌が悪いからと周りに当たるような方ではないのですよ? とてもお心が広くて…」 婚約者を必死にフォローしている彼に、イオンはうんうんと頷いた。 「大丈夫ですよ。そもそもリウムの方が怒らせたんだろうし」 イオンが冗談っぽくいうと、レンシアは浮かない顔をして俯きがちになってしまった。 「……ジョルシヒンさんが悪いわけではありません… エルメーザ様はきっと…俺に……」 今は二人きりな所為か、それとも疲労で気が抜けているのか レンシアは覇気のない声で呟いた。 どこか辛そうに見える彼だったが、その左手の薬指には細い指輪が光っていて 想像も出来ないくらいのプレッシャーを背負っているのだろうと察してしまうイオンだった。 「…レンシアさんが気にすることないんですよ リウムも多分全然気にしてないだろうし」 あんなに怒らなくてもとまるで反省の色なしにぼやいていた彼のことだ、今頃忘れているに違いない。 レンシアはようやく顔を上げると、儚げに微笑んだ。 それは一瞬で溶けてしまいそうなほど、 雪のように柔らかくて美しくて、繊細な笑顔だった。

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