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いきづまる 6

「仲が良いのですね」 美しくて目が離せないのに、彼が纏うその繊細な空気が、怖いと思ってしまった。 イオンは思わず彼に顔を近付ける。 「レンシアさん…ちゃんと寝ていますか…?」 「…え?」 「ちゃんと、寝た方がいいです。ご飯も、ちゃんと食べて…」 レンシアは戸惑ったようにイオンを見上げていたが、 イオンが真剣な眼差しを向け続けていると彼は首を傾けるようにして頷いた。 「ありがとうございます…やっぱり…あなたはお優しいのですね」 「優しいというか、人として…です。 レンシアさんは若いし…まだ多少は無理が効くのかもしれないけど… そうやって無理をし続けて…死んだ人を知ってるので…」 あの頃自分は、何の為にそんなに頑張っていたというのだろう。 国を背負うどころか愛する人すら居なかったのに。 全部を持っている彼はきっと尚のこと、無理をしてもいい免罪符が山ほどあるに違いない。 だからこそ、制御しなければどこまでも自分を削ってしまうのだ。 「死んだら…何にもならない」 人生やり直せたら。 もう死ぬという時に思う事がそんな事というのは不幸、なのかもしれないから。

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