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癒しの魔法 5
イオンは咄嗟にリウムを突き飛ばして両手を上へと向けた。
無我夢中で守護の授業で習った障壁を張ると、
横からもう一枚大きな障壁が伸びてきて
三人のいる空間を避けるようにしてシャンデリアは地面に落ち砕け散った。
何が起きたのか分からないぐらいの轟音が響き渡り、
シーンと辺りが静まり返った頃には三人はドーム上の障壁の中に立っていた。
周りにはシャンデリアの残骸が散らばっていて、壁がなかったら普通にぐちゃぐちゃになっていた事だろう。
「はぁ…っ……は…っ」
アドレナリンが出過ぎた所為か咄嗟でも思っていたよりもしっかりと障壁が張れていたようで身体はどこも痛くない。
自分にこんな力があったのかと思うほどだが、
イオンは精々天井の一端を担ったくらいで半分以上はイヴィトの魔法だろう。
魔法を解除して下を見下ろすと、半泣きのリウムが床に座り込んでいた。
「し……死ぬかと思った…」
今更恐怖を思い出して、イオンは思わず膝から崩れ落ちてしまう。
「大丈夫…?」
「ありがとうイヴィト…助かった……」
イヴィトは不安げな顔をしながらもイオンの肩に触れてくる。
「二人とも…あ…ありがとう」
「怪我してへんか?」
「うん…平気」
リウムは泣きそうな声でお礼を言ってくれるが、イオンの心臓はドキドキと騒いだままなかなか収まりそうになかった。
しかし周りに散乱した瓦礫の中に生徒が一人倒れているのを発見してしまうと、
その鼓動はぴたりと止まってしまったかのようになる。
そういえばシャンデリアの上に誰かが引っ掛かっていたのを思い出し、
イオンはもつれる足を引き摺りながらその誰かの元へと急いだ。
制服を着た生徒は頭から血を流し、床に突っ伏している。
「無事ですか!?」
「だ…大丈夫です、先生…」
教師達が集まってきてイヴィトは対応してくれているが、イオンは倒れている生徒に声をかける。
「おい…しっかりしろって…」
まさか死んでいるのではと思うとあり得ないくらいの恐怖が襲ってくる。
彼が誰なのか何故あんなところに居たのかは分からないが、
あの高さから落下して普通に考えれば平気なわけがない。
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