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癒しの魔法 8

「俺も近くにいたけど、あの人は死ぬところでした ルールとか…色々あるでしょうけど、レンシアさんの行い自体は尊いものでは…?」 「知ったような口を聞くな。そこを退け」 「お、怒らないって約束するなら退きます」 「なんだと?」 ぎろりと睨み下されると早速麻酔が切れてくるが、このままだと手でも出そうな雰囲気を感じ取ってしまい イオンは奥歯を噛み締めて彼の前に立っていた。 「もうやめてよ…っ!!!」 急に空気を変えるような声が食堂内に響き渡る。 次期皇帝の声とは別のベクトルで空間を支配するような声だった。 思わずそちらに顔を向けると、 目に涙を溜めたリウムがつかつかとこちらにやってきてエルメーザを睨んだ。 「喧嘩なんてする必要ないでしょ!?なんで仲良くできないの!?」 「またお前か……」 「他にもっと気にすることがあるんじゃないの!?」 泣きながら怒り始めるリウムだったが、イオンは背中に触れられてそちらを振り返る。 レンシアは乱れた呼吸を繰り返しながら限界の顔をしていて、気絶寸前になっている。 「レンシアさん…?どうしたんですか…」 「……ここにいたくない」 「え?」 彼の訴えは一番近くにいたイオンにも届くかどうかというほど小さなものだった。 イオンは本当に倒れそうな彼の身体を支えた。

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