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さよなら青春 1

とんでもないことをやらかしてしまった。 無我夢中だったとはいえよりにもよって次期皇帝に楯突いてしまったし、 それだけに飽き足らず婚約者を拉致ってしまった。 ベッドに横たわっているレンシアを見下ろしながらも、イオンは深いため息を溢した。 失われた青春を取り戻そうとしただけなのに。 気兼ねなく話せる仲のいい友達、芽生える熱い友情、 そしていつか好きな人ができて、お互い相談しあったりして…。 そんな淡い期待が見事に爆散した気がしてならない。 明日からきっと次期皇帝を敵に回したヤバい奴だと白い目で見られること請け合いだ。 というよりなんらかの罪状がついてもおかしくない。 最悪国家反逆罪とか謀反者だと投獄されるかもしれない。 「イヴィトやリウムが仲間だと思われないといいけど…」 幾ら主人公といえどリウムも口を出していたし、もしかすると自分が居なかったらリウムがうまく収めていたのかもしれない。 ここがゲームの世界でもあるとすれば、自分は本当はイレギュラーな存在で、 この世界の秩序を乱して崩壊を招きかねない存在、なのかも。 だけど硬く目を閉じたまま死んだように眠っているレンシアを見ると、 やっぱり放っておくなんて出来なかったとイオンは思ってしまうのだ。 外に出るのも怖いのでイオンがレンシアのベッドの横の椅子で籠城していると、 医務室に誰かが入ってきた。 白衣、ではなく普通に真っ黒なローブを身に纏った眼鏡の人物は生徒ではなく大人だ。 「魔力切れしかけてるんだろぉね。癒しの魔法は“命を削る魔法”だし」 緊張感のない間延びした声で言いながらも彼はベッド脇までやってくると、手に持っていた銀トレーをベッドサイドの机の上に置いた。 そして近くにあった点滴用のスタンドを連れてきている。

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