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さよなら青春 4
夕食も食べずに泥のように眠ったイオンは、
翌日目が覚めてもやっぱり心がなんとなく重くて
だけど持ち前の明るさでどうにか良い事を見つけ出して、
悔いのない人生だったと思おう、と決めて持ち直すことにした。
レンシアだって誰に褒められずとも命を削って人を助けていた。
自分も誰に褒められずとも自分に誇れる事をしたのだと思うことにした。
そうでないととてもではないが部屋の外に一歩も出られないからだ。
リウムは既に部屋から居なくなっていたので、
イオンは一人でトボトボと食堂へ向かった。
食堂は昨日あんな騒ぎがあった後だったが、
一応残骸などは片付けられいつも通りに機能しているようだった。
しかし大きなシャンデリアが無くなっていて天井はポッカリと空間が空き寂しい感じにも見えた。
イオンが現れると、案の定生徒達の視線はこちらへと集まった。
だけど誰も声を掛けて来ず、ひそひそと囁き声に晒されてしまう。
食事をとっていたら警官隊が突入してきて連行される恐れを感じ、
イオンはその前にせめて朝食をかき込んでおこうと足早に食事を受け取り
部屋の隅っこの方のテーブルに座った。
すると近くの席にいたはずの生徒達は、食べかけの食事を持って
遠くに移動していってしまう。
本格的な村八分を肌で感じたが、
井小田の学生時代を思い出すと自分はそういう運命なのかもしれないと思ってしまった。
男が好きだとバレて、キモいといじめられ揶揄われ、無視をされて。
そうよアタシはゲイよ!男の子だ〜いすき!というキャラを確立するまではとても辛かった。
だけど今回は、そうよ国家反逆者よ!などと開き直っても冗談では済まされないだろう。
「……何やってんだろ俺…」
朝食のスープを見下ろしながら、じわっと視界が滲む。
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