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精霊騒ぎ 1

暫く泣いていたが、ようやく落ち着いてきて鼻を啜りながらもイオンは朝食を口に運んでいた。 ローラは呆れたように、どこか引いたような目で見てくるが イヴィトは本当に心配そうにしてくれていた。 「俺…謀反とかで捕まるのかな……」 「まさか、さすがにそんな事にはならんと思うよ…」 「だって…あんなこと言っちゃったし… レンシアさんも攫っちゃったし…」 生まれて初めての心許せる友人達に早速愚痴ってしまう。 「次期皇帝様をボンクラ呼ばわりしたそうじゃないか。 愉快な男だな君は本当に」 「かっこよかったと思うで!ゆ、勇気があって!」 「頭に血が登って勝手に口が滑っちゃったのよ…あんなこと言うつもりじゃ……」 思い出すとまた泣けてきそうだったが、 誇れる事をしたと今朝方決めたばかりだったのでイオンは唇を噛み締めた。 「あの後リウムくんも怒ってエルメーザ殿下と話してたみたいやけど… 先生が来て解散になってもうて…」 自分達が出て行った後のことをイヴィトが教えてくれたが、きっと凄まじい空気だったに違いない。 リウムは主人公らしい正義感を発揮したのだろうか。 「レンシアさんは“魔力切れ”を起こしかけてたんだって… 放っておいたら危なかったかもって…アニーフ先生が… だから…行動には後悔してないけど……」 イオンはそう言いながらも、やはり遠巻きに様子を伺っているような周りの様子にはため息が溢れてしまう。 「二人や…リウムを巻き込んでしまったら申し訳ないというか…」 「俺はタダでは巻き込まれてやらんから安心しろ」 「…俺も…イオンは何も間違っちゃないと思う… 確かに言い方はちょっと良くなかったかもしれんけどね…」 相変わらず淡々としているローラと、肯定しながらもちゃんと良くない部分は指摘してくれるイヴィトは何も態度が変わっていなくて これこそが真の友情なのだなと実感してしまう。

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