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精霊騒ぎ 4
クラスでも授業でも他の生徒達からは若干遠巻きにされているような気配がしたが、
教室でも守護の授業でもずっとイヴィトが隣にいてくれて
あり得ないほど救われているイオンだった。
更に言えば守護の授業で二人は先生に褒められてしまった。
昨日の咄嗟の判断は素晴らしかったとか、
特にイヴィトの障壁は見事だったと拍手され
イオンは自分の事のように誇らしく思ったのだった。
しかし、そんなありがたさを痛感してしまうのは誰も知り合いのいない疎通の授業でだった。
顔見知りはいたものの目を合わせてもらえず、
結局イオンはいつもの席にポツンと一人で座っていた。
レンシアは流石に休みのようで、無理もないかと思う。
寧ろゆっくり休んでほしい気持ちだ。
授業が始まれば幾分か孤独感は薄れるが、
The魔法使いの風体の老人教師は教室に入ってくるや否や重苦しい雰囲気を醸し出している。
「皆も聞いたとは思うが…
三年生の生徒が疎通の魔法の訓練中に精霊を呼んでしまったそうじゃ……」
教師の言葉に教室内はどよめく。
「精霊と契約すれば魔力が増幅する…精霊は完璧な予言を授けてくれる…精霊は望みを叶えてくれる…
それらは全て迷信じゃ…精霊は魔法を食べる恐ろしい生き物…
一度口をきけば、死ぬまで取り憑かれてしまう…」
深刻な表情の老人に、教室内は静まり返った。
「よいか…諸君……決して精霊と口をきいてはならん。
どんなに魅力的な提案をされども、決して頷いてはならんぞ
降霊は黒魔術同様本来禁忌なのじゃ…」
子どもの頃は大人の言うことなんて話半分で聞いていたが、35年あまりの経験からすると大人が真面目に話している事は本当に恐ろしい事なのだと分かる。
生徒達にも少しはそれが伝わっているのか茶化す者は誰も居なかった。
「疎通の魔法はあらゆるものと繋がりやすい…
滅多にないこととはいえ、気をつけるんじゃぞ…よいな?」
精霊とは恐ろしい生き物。そんなつもりがなくても現れてしまう。
レンシアは、大丈夫だろうか。
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