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殿下と茶をしばこう! 1

ヒソヒソ話なんて雑音だ。 気にしなければどうということもない。 アタシが美しすぎる所為だわ、 などと良いように解釈して堂々と胸を張っていれば良いのだ。 と、全ての授業が終わった頃には遂に完璧に開き直る事が出来ていたイオンは そのような感じで廊下を歩いていた。 昨日サボった分と、今日もぼうっとなってあんまり話が入ってこなかったため 授業の復習でもしてみようかと図書室へ向かって歩いていると 物陰から現れた何者かに腕を掴まれてしまった。 「ひぇ…っ!?」 間抜けな声を上げながらそちらを見ると、 廊下に置かれた無駄に豪華な巨大壷の向こうからレーザーのような視線が突き刺さる。 その深紅の輝きは化け物のそれだったが、 壷の影から現れた端正な顔立ちには目を丸くしてしまう。 「え、ええええエルメーザ、で、殿下……」 がっつりと腕を掴まれたまま血走った目で睨まれ、 イオンの上機嫌は地の底まで落ち切ってしまった。 殺される…、と本能で感じてしまうその威圧感には腰が抜けそうになってしまう。 「昨日はレンシアが世話になったな…リチャーデルクス・イオン」 肉食獣の唸り声のような声にイオンはガタガタと震えながら後退ろうとした。 昨日は死にかけてバフがかかっていた事を思い知る。 もう二度とあんな口は聞けないだろう。 「立ち話もなんだ。茶でもしばきに行かないか?」 「い…いや…俺はえっと…」 「行かないか????」 「行きましょう!スタバりましょうや!」 イオンはビシッと背筋を伸ばして思わず敬礼をしてしまう。 次期皇帝は、うん、と頷きながらもにこりともせずイオンを引きずっていく。 身長だけで言えば多分自分の方が2cmくらい高い気がするのだが、 そんなもの何の意味もないくらいのオーラを彼は纏っており 今は静かにしているのが、昨日ガチギレていた時よりも余計に怖いような感じがして とてもではないが逆らう気など起きないのだった。

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