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殿下と茶をしばこう! 2

イオンは学園の奥の入った事のない部屋に連れて来られてしまった。 学園内は広すぎて入ったことのない場所の方が多いわけだが、 そこはどこかの応接室ような綺麗な部屋で 豪華な装飾のテーブルやソファが置いてあった。 だが部屋の中は誰もおらず、 密室に完全に二人きりになってしまった。 手は離してもらったものの、 死ぬ、と直感しイオンは半泣きになりながら床に頽れた。 「あ、あの、あの…つ…罪なら償いますから…命だけは…っ」 「…は?」 「命さえあればやり直せるので…っ!だからどうか……っ!」 イオンが両手を組んで懇願していると、 エルメーザはため息を吐きながらも壁際に置いてある戸棚の方へ歩いて行ってしまった。 「……昨日のことならもう怒っていない…」 「う、うそだぁー…」 「本当だ…、寧ろ…世話をかけたな。 レンシアがあんな状態だなんて私は気が付かなかった…」 エルメーザはこちらに背を向けていて 逃げるなら今がチャンスだと思うのだが腰が抜けていて立てそうにない。 「いや……気付こうともしなかったのかもな…」 どこか弱気な声を溢す彼に、イオンは床にへたり込んだままその背中を見上げた。 エルメーザは戸棚からティーカップを取り出し、どうやら紅茶の準備をしてくれているらしい。 「悔しいが…お前の言う通り…だ」 「へ……?」 「身近な人間を傷つけている様では、国を背負うに値しないと…」 そこまでは言っていない気がしたが、どうやら彼は彼なりに反省しているらしい。 リウムが、あれは相当効いてた、と言っていた事を思い出す。 だからと言ってイオンは何も言えずにいて、暫く二人の間には沈黙が流れた。

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