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殿下と茶をしばこう! 5
「人の上に立つ者であれば…多少の自己犠牲は必要だ」
「そうかもしれないけど…でも…だからこそお互い支え合うって事が必要なんじゃ…」
イオンはつい普通に喋ってしまい、ギロ、と睨まれてしまった。
「ヒィ!ごめんなさい!また余計なことを言いましたよね!?」
「はぁ……」
しかしエルメーザは疲れたように息を吐き出しながら、どこか項垂れるように肩を落とす。
「……私は……レンシアが怖い…」
「え…?」
「あの…何もかも見透かしているような…紫炎の瞳が怖いんだ…」
次期皇帝は麗しい語彙力で表現しているが、その声は消え入りそうなものだった。
生まれた時から皇帝になる事が決まっている彼の心労はきっと誰にも理解し難いものなのだろう。
いうてもまだ18歳なわけで、と思うと35年あまりの精神年齢が余裕を見せ始めてしまう。
「人と向き合うって…怖くて当たり前ですよ。
誰かと向き合うほど、自分の嫌な部分も見なくてはいけなくなるから…」
ほとんど井小田(35)が喋っていたが、エルメーザはどこか縋るような眼で見つめてくる。
そういう表情をされると、すごく大きく偉大に見えていた彼もただの一人の存在なのだと思えてきて
イオンは思わず微笑んでしまった。
「でも…最初から全部なんでも分かったらつまらないでしょ
分からないけどやってみる。それが恋愛の醍醐味では?」
自分もろくな恋愛などしていなかったくせに
年上ヅラして偉そうに言ってしまうイオンだったが、
エルメーザは何か考えるように俯いてしまった。
「……努力する…」
「ふふ。真面目ですねぇ。でも、良いことだと思います」
「良いこと…?」
「うん。トライアンドエラーがちゃんとできる人はいい上司になるんじゃないっすか
失敗を恐れないこと…失敗しても腐らずに学びに変えること…って自己啓発本に書いてありました!」
冗談のつもりだったが、エルメーザは何か唸りながらも考えている様子で
超絶上流階級の真面目さには大変なやり辛さを感じてしまうのだった。
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