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嘘つきのルート 1
生きる意味を、
存在している意味を時々考えてしまう。
みんな、分かっているのだろうか。
だからそんなに堂々と、楽しそうに、
真っ直ぐに前を見て生きているのだろうか。
それが凄く眩しくて、羨ましくて、だけど自分のような存在があまり見てはいけない気がして。
邪魔を、してはいけない気がしている。
ずっと邪魔にならない生き方を考えていた。
部屋の端っこに蹲って、じっと息を殺して潜んでいるように
なるべく物音を立てず、視界に入らず、なんの主張もしないように。
それが凄く窮屈だと思う心が、ある意味では一番邪魔だったのかもしれない。
だけど心は無くせないから、どうにかそれが自由になれるように
時々世界から逃げ出して、誰もいない所で大きく息を吸って叫んだ。
意味のない言葉で喚き散らかして、
虚しさを抱えながらまた窮屈な世界に帰っていくのだ。
一生そうやって生きていくのだろうと諦めていた。
邪魔にならずに、
死ぬまで自分を押し込め続けているのだと。
だけど、押し込め続けていたものはいつか爆発し溢れてしまう。
ある日、何気ないきっかけで感情が振り切れて
身体から光が溢れ出し、それはどんな場所にいても目立ってしまうほどの輝きだった。
家具のように居ないものとされていたはずなのに、
急に大人が集まってきて身体の隅々まで見られる羽目になる。
「何故黙っていた…!?魔法が使えるなんて…!」
「なんだこの力は…測れないぞ…」
「まさか…“呪われた力”なんじゃ…」
「いいや、違う、これは……」
「これは、癒しの力だ……!」
無価値なものに価値がつく時。
人間は争い奪い合う。
存在意義とはなんなのだろう。
他人がつける、値段、なのだろうか。
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