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嘘つきのルート 4
「レンシアくん?」
老人の声は穏やかだがハッキリと脳を突き抜けていく。
それは、嘘を見抜いているぞという警告のようにも響いた。
レンシアは唇を噛み締めると、彼の方へと顔を向けた。
「……嘘を吐きました…」
「ほう?」
「俺は……自分の為に魔法を使ったのです…
怖かったんです……“解ってしまった”から…」
レンシアは自分の身体を抱くようにしながら小さく息を吐き出した。
「“死にたくなかった”……」
絞り出されたレンシアの声を聞いて、老人はゆっくりと椅子から立ち上がると
震えているレンシアの肩に優しく触れてくれた。
「“感覚”が解ったのかね?」
老人の問いかけにレンシアは頷いた。
あの時、レンシアはほとんど絶命しかけていた生徒の感覚を共有してしまっていたのだ。
自分の血の匂いや肢体が砕け散っている感覚、
表現し難い程の痛みに、途切れ行く呼吸と、
信じられないほどの恐怖を。
「…君の“疎通”の魔法は達人のレベルに達しているようだな。
実に驚くべき事だよ」
「俺が……強化しなくてはならないのは癒しの魔法です…
先生…俺はどうすれば良いのでしょう…?
こんな無駄な力ばかり強まって…、癒しの力が無くなってしまったら…俺は……」
レンシアは泣きそうになりながらも老人に必死に訴えかけた。
彼は落ち着かせるように肩を撫でながら、近くにあった背もたれのない椅子にレンシアを座らせる。
「力が完全に無くなることはない、弱まることはあっても…な」
「ですが……っ」
「誰しも、魔法には限界値というものがある。
エネルギーは無限だが扱えるのは有限だ。
もちろん全ての魔法を等しく強化できるのが理想だが、
得意不得意というものがあり…あまり向かない能力を上げるのは危険でもある」
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