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大天使がつくられる過程 1

産まれたばかりで孤児院の前に捨てられていたレンシアは、そのままその孤児院で育ち 7歳で魔法を授かった事が判明した。 庶民が魔法を授かることは珍しいとはいえ年に数名は現れる。 しかし、平等と銘打ってはいるものの 貴族向けに作られたハートン学園の学費はとてもではないが庶民が払えるものではない。 法律では魔法を授かった者は学園での教育が義務付けられており、 例え経済的理由であったとしても放置すれば法律違反として魔法を取り上げられて 酷い場合は拘束される事もあるのだ。 故に、投資の意味も込めて貴族が後継人として資金を援助し 卒業後は自分の家臣や会社の社員として恩返しするのが一般的だった。 中には子どものいない貴族の養子として引き取られる事もあるが、 いずれにせよ資金援助先探しは難航する場合が多かった。 しかしレンシアの場合は逆で、 癒しの魔法を発令した事により貰い手が殺到した。 あまり良い環境とはいえなかった孤児院は、強かにこれはチャンスと睨み オークションのようにしてレンシアの引取先を選んだ。 孤児院への多額の寄付と引き換えにレンシアを獲得したヴァガ伯爵は、 先先代から受け継ぐ莫大な資産を持った貴族ではあったが、資産を食い潰すような生活に焦りを覚えているようで その期待は非常に大きなものだった。 癒しの魔法を授かっただけでも王室付きは約束されている。 だが、ヴァガ伯爵の期待はそれ以上のものだったのだ。 孤児院でろくな教育も受けられていなかったレンシアは、多くの家庭教師を与えられ 部屋から出る事すら許されず、様々な知識を叩き込まれた。 勉強をさせて貰えるだけでも裕福な事なのだ、とレンシアは必死に喰らい付く他なかった。 だが、レンシアが10歳になる頃に ヴァガ伯爵の期待は裏切られる事になる。 レンシアの魔力数値を測った際、 上位能力の一位が“癒し”では無かったのだ。 これにヴァガ伯爵は酷く激怒し、 “大天使の生まれ変わり”だと嘘をついたのか、とレンシアを厳しく叱り付けた。 そんな事は一言も言っていなかったし、 そもそもレンシアはそれがなんなのかすらわかっていなかったが 恐らく値段を釣り上げる為に孤児院が確証のないことを言ったのだろう。 だがレンシアは訳もわからず部屋に閉じ込められ、三日も食事を出されなかった。 しかし、ヴァガ伯爵は高い買い物をみすみすドブに捨てるような男では無かった。 息も絶え絶えなレンシアに嘘のように優しい笑顔を向けてこう言った。 「いいか、レンシア。 お前は“大天使の生まれ変わり”として生きるのだ。 どうせ本当のことは誰も分かりやしない」 …と。

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